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Date - 2023.09.11

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帰属意識とタトゥー文化とアイデンティティと

僕は日本人であることに誇りを感じている。
それと同じか、それ以上に沖縄に自分のルーツがあることに誇りを持っている。

 

海外に出たきっかけは、日本の人間関係に嫌気がさしたのが1つの理由だった。
日本を飛び出し、クルーズ客船で働き出したのは、22歳のことだった。

その頃は、日本人であることよりも、私は地球人だという意識が強かった。
同じ地球に住む人じゃないか。
僕らの祖先は同じホモサピエンスでしょ。

 

肌の色や文化、話す言葉が違っても皆同じ地球人でしょ、と本気で思っていた。(今でもこの意識は心に常にある)

だから、隣人を愛することに対する壁はなかった。
誰とでも同じように接する、日本とまったく違った環境でも僕は日本と変わらず人々との関りを積み重ねていた。

いつの頃からだろうか、
全体主義を掲げる一方、僕は、自分が帰属するものについて考えを巡らせるようになった。

 

僕の母方は、沖縄出身である。
祖父母は今も沖縄に住んでいる。

子供のころは、毎年夏休みのたびに沖縄の祖父母の家に行っていたし、2歳ごろに半年ほど沖縄に住んでいたこともあるらしい。(僕は覚えていないが)

その影響か、僕は沖縄に対してとても親近感がわいている。

沖縄人は、同胞に対する仲間意識が強い人が多い。
それは、沖縄に対する帰属意識が強いからなんだろう。

 

 

帰属意識と全体主義

SNSが発達したおかげで、今ではどこに居ても誰とでも繋がることができる。

10年前にクルーズ客船で働いていた時は、家族に連絡をしようと思ったら、テレフォンカードを使って船内の電話から自宅に電話するしかなかったが、今はWiFiにつないでLINEやメッセンジャー、WhatsApp等で家族や友人とメッセージのやり取りをしたり電話をして話すことが出来る。

便利な時代になったものだ。

 

初期から中期のSNSでは、世界中の人と繋がれることで、自国の小さい組織に属することよりも世界全体で繋がることに重きを置く人や組織が生まれていった。

 

多様性を認めること。

それもSNSが大きな影響を与えたものの一つ。
多様性が他の国より無いと言われる日本でさえも、ここ10年でどんどん多様性に寛容になって来ている。

 

SNSを通して世界は1つの大きな組織になり、人々はそこに属する人となるかと思われた。

しかし、世界はまだ1つになってはいない。

それどころか、人々はSNSを通して、それぞれのコミュニティを形成していった。

 

ここ20年で新たな国として独立する民族も増えている。
スペインでは、カタルーニャ州が国として独立しようという動きがあるし、他にも独立をしようと動いている民族がある。

 

SNSにより全体主義が広がったことによる反動で、人々は帰属する場所を求めている。それは、曖昧になったアイデンティティを固めるための動きなのかもしれない。

 

それは僕自身にも起きている。

クルーズ客船で働き、鍼灸師としてのアイデンティティを持つなかで、日本出身であると言葉にすることで、日本への帰属意識が高まり、また自分のルーツである沖縄への帰属意識が高まっている。

これは年齢を積み重ねたことによる影響もあるのかもしれない。

 

20代は狭いコミュニティに縛られるよりも広い世界に憧れるお年頃、それは全体主義につながる。

逆に歳を重ねると、つながりを広げるよりもある程度限られた範囲で、コミュニティの中で生活をすることを好むようになる。

 

いろいろなことを経験した20代から30代になるにあたり、僕にもそういった気持ちの変化が帰属意識を高めることに繋がったのかもしれない。

 

 

 

沖縄とタトゥー文化

海外に出ると、多くの人が体にタトゥーを彫っているのを見かける。
クルーズ客船で働くクルーたちの中にもタトゥーを彫っている人が多い。

 

日本ではヤクザのイメージが強いタトゥー、
江戸時代には入墨刑があり、罪人に入れ墨を入れることがあったのが、
未だ多くの日本人がタトゥーに対して良い印象を抱いていないことに影響を与えているのかもしれない。

 

しかし、視野を広げて見れば、タトゥーが民族の誇りである場合もある。
ニュージーランドのマオリ族、アメリカのネイティブアメリカン、グリーンランドのイヌイットなど。

日本では、アイヌ民族や琉球民族もタトゥー文化を持っていた。

海外の、特に若い世代は、タトゥーを彫ることに抵抗がない人が増えているし、タトゥーが入っている人に対して特に悪印象を持っていない。

アート性の高いタトゥーも多いし、僕個人としても綺麗なタトゥーを見ると自分も入れたいなと憧れを抱く。

 

タトゥー=ヤクザという印象をもっと変えて行けたら良いなと思っている。
タトゥーOKの温泉がどんどん増えて行ったら良いなと思っている。

 

さて、少し沖縄のタトゥー文化の話を挟みたいと思う。

琉球王国時代、沖縄の女性は、ハジチと呼ばれるタトゥーを手に刻むことが成人になった証であったし、結婚をした証でもあった。

 

琉球王国が日本に取り込まれ、1899年に明治政府によって入れ墨を禁止された影響(入れ墨禁止は、文明開化の政策の一環で、同時にちょんまげやお歯黒なども禁止された)で、ハジチ文化は憧れから排除されるものへと変わっていった。

 

琉球王国時代にハジチを手に入れることは、琉球の女性として当たり前で、厄払いの意味や婚姻した証、また内地(本州)へと連れていかれるのを防ぐ意味合いもあった。

 

現在、このハジチの文化を復興しようと活動している人たちが居る。

参考記事

琉球の入れ墨「ハジチ」復興、自らの手で うちなー女性の誇り刻む

今までの当たり前が違法になる?沖縄の刺青文化「ハジチ」から考える、タトゥー裁判やマイノリティの表現の自由について

 

 

アメリカに住む僕の従妹も同じようにハジチに対する発信をしている。

人々にとってタトゥーを入れることは、いろいろな意味を持つ。
決意を忘れないようにタトゥーを入れる人もいれば、自分の帰属する民族の文化として、誇りを持ってタトゥーを入れる人も居る。

 

これは、否定されるべきではないと私は思う。

 

沖縄は、日本の中でも特殊な環境にあった場所である。
戦後、沖縄が日本に返還されるまではアメリカが所有する場所であった。
それは、ほんの50年前のことだ。(沖縄が日本に返還されたのは、1972年)

 

当時のことを覚えている世代は今もまだ生きている。
私の祖父母世代はとくに沖縄人であることへの帰属意識が高い。
それがアイデンティティの1つなんだと思う。

そして、現在においてハジチ(タトゥー)を入れることは、帰属意識を形にして体に刻むことなんだと思う。

僕はこれを支持したい。

また、タトゥーを入れること自体がより広く受け入れられて欲しいと願っている。

 

 

 

アイデンティティを形に

人類は、歴史上で今ほど民族の隔たりが無い時代を体験したことがない。
どこで暮らしていてもスマホ1つで様々な情報に触れることが出来るし、他の国々で暮らす人々の生活を知ることが出来る。

それは人々の違いを表すものが見えにくくなったとも言える。

肌の色や見た目だけで、国籍を判断することが難しくなって来ている。
○○人っぽいという言葉は、そう遠くない内に使われなくなっていくのではないだろうか。

 

そこで人々が拠り所にする1つにタトゥーがあってもおかしくないだろう。
もちろん、タトゥー以外の何かであっても良い。

 

自分のアイデンティティを形にすることが、人々の帰属意識を高めることに役立つだろう。

 

多様性は認められて来ているし、この流れは今後も加速していくだろう。

その代償として、人々はアイデンティティを失ってしまうかもしれない。

大和魂という言葉があるように、文化が心や魂を形成していくのは間違いないと思うが、いち個人がそのアイデンティティを示す際に、今までであれば見た目がその役割を担っていたが、今後は見た目だけで判断ができなくなってくるだろうし、良い意味で見た目だけで判断すべきでは無いのだろう。

 

しかし、見た目で判断が出来ることは良い面もある。

服装やアクセサリーでそれを示すも良し。
コミュニティに属することは安心につながることでもある。
敵と味方を判断するために、何かしらの形でアイデンティティを示すことは有効だろう。

 

敵も味方もなく、人類が平和であることが理想ではあるが、何千年経っても人々が争い続けている現実を見る限り、理想が現実になるまでまだまだ時間がかかるだろう。

自分のルーツ、アイデンティティを大切にする人にとって、勝手に消えることのないタトゥーという文化は、1つの良い手段だと僕は思う。

タトゥー文化が日本社会でも受け入れられ、誇りを持ってタトゥーを入れる人やアートとして、意味を込めてタトゥーを体に入れる人が排除されない社会になって行ったらと願っている。

 

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僕らは考え続けることでしか、未来予想図を想い描くことは出来ない。

 

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