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Date - 2023.11.01

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クルーズ客船においての脉診について。故長野潔氏著書より学ぶ。

脉診についておさらいをしている。(脉=脈の旧字体)
メモ代わりにこの記事にまとめていこうと思う。
(※出典は、故長野潔氏の著書:鍼灸臨床 わが三十年の軌跡)

 


鍼灸臨床わが三十年の軌跡―三十万症例を基盤とした東西両医学融合への試み

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脉診について

脉診を行う際、私は、脈の「速さ・遅さ」「強さ・弱さ」「長さ・短さ」「浮き・沈み」、さらに加えて形状を診ている。

 

一般的に、脈の基本は、「浮・沈・遅・数」となっている。
「浮、沈、遅」に関しては、東洋医学の知識がなくて漢字から意味を察することが出来ると思うが、「数」は何だろうと思う人がいるかもしれない。
数脉とは、速い脈、1分間に80回以上の脈拍を示す。

 

これら4つの脉を基礎としながら、僅かな脈の性質の差を術者の指頭で見極め、脉診ではそれぞれの脉の分類がされている。

 

脉診法には、脉状診、六部定位脉診、人迎脉診等がある。
どれも臨床的に価値を持っている。
私は、脉状診を一義的に、六部定位脈診を二義的に、そして、ユミエパルス(長田由美江氏が提唱する脈診)を三義的に行っている。

 

脉状診について、私は故長野潔氏の著書を元に独学で勉強を続けているため、
故長野潔氏と同様に王叔和の「脉診」に従って行っている。

王叔和(210〜285年)、晋代の人で、晋以前の脉学を大成して「脉診」を著した。これは中国における最初の脉学の専門書である。

 

脉状は、「七表の脉」「八裏の脉」「九道の脉」の計24に分けられている。
(他の文献では、さらに別の分類のされ方がされているため、これは一説と捉えて頂きたい。)


私がクルーズ客船での治療の際に良く見る脉状は◎、時折見る脉状は◯を付けたので参考にして頂きたい。

 

「七表の脉」
浮◎、芤、滑◎、実◎、弦〇、緊◎、洪◎
「八裏の脉」
微○、沈◎、緩○、濇あるいは渋○、遅○、伏○、濡まるいは軟◎、弱◎
「九道の脉」
長〇、促〇、動、牢、短◎、虚◎、結〇、細〇、代〇

臨床の場においては、時に単一の脉の場合もあるが、多くの場合は複合している。

 

ここで少し、寄り道をしよう。

最初に、脉の基本は、「浮・沈・遅・数」と書いた。
しかし、「七表の脉」、「八裏の脉」、「九道の脉」の中に、
「浮・沈・遅」はあるが、「数」脈がない。

基本の脈が王叔和の「脉診」の中には記載されていなかった。
これはどういうことだろうか?

興味深い論文があった。
関西医療大学保健医療学部の3名による論文である。
(参照元
https://www.google.com/url?sa=t&source=web&rct=j&opi=89978449&url=https://www.kansai.ac.jp/pdf/kuhs_kiyo_07/oh.pdf&ved=2ahUKEwis1r72-I6CAxUkkWoFHXsoC1UQFnoECBYQAQ&usg=AOvVaw0jrp9qJoBI7zJB1jXfDnTF

 

この論文で言及されている結論を書くと、
「数」の脉は、「促」に通じる、どちらも脈のスピードが速いことを示す脉状だり、「数脉」=「促脉」であると考えることができそうであると言える。
断言することは控えるが、「数脉」=「促脉」の考え方はおおむね正しいと言えるのではないかと思う。

また、数脉は、脈のスピードが速い意味だけであり、虚と実どちらの状態でも起こり得る脉状だと言える。
浮・沈・遅が、それぞれ特定の体の状態を示すのに比べ、数脉だけでは、虚実等の身体状態を示しきれない。
そのため、王叔和は、数脉ではなく、促脉を九道に加えたのではないかと私は考えている。

 

脉状は、精神、身体を含め全人格的に生々流転する生命の今の状態を表している。
それを修練された術者の指頭をもって捉え、気血の盛衰、病位の推定、病気の軽重、予後の推定をするのに重大な意義を持っている。


しかし、脉状=診断治療という訳はいかない。
腹診、背診、局所診も重要であり、どれも欠かしてはならない。
脉診とそのほかの診察が相反する場合もある。
私は、故長野潔氏の著書にならい、脉診と腹診が異なる様相を示している際は、腹診に沿って配穴を決めている。
また、刺鍼の刺激の量は、脉状を重視しコントロールしている。

 

脉状と腹証が相異なる場合の多くは、治療が長く必要であり、
難しい、症状が改善しにくい場合が多い。
多数の処方薬の内服をしている人に比較的起こりやすいという実感がある。

 

脉診に関しては、施術者の感覚によるところが大きく、
同じ患者の脉を診ても施術者によって違う脉状を示すこともあると言われている。

脉診の客観性構築が鍼灸業界の長年の課題であると言える。


これに関しては、中国での発展が目覚ましく、人工的に脉状を作り出す機械が作られているようである。
値段はいち個人で買える額ではないが、テクノロジーの発達と研究が進むことで、
将来的には安価に増産し、教育レベルで使用することが出来る日が来るのではないかと私は考えている。

(中国では間違いなくそうなるだろう。日本の鍼灸業界がそこに追いつけるかは正直わからない。)

 

しかし、現状、それはずっと先の話であり、
今現在臨床現場に立っている鍼灸師たちは、日々の診察の中で、刺鍼・施灸前後で患者の脉を毎回診続けていくことでしか、脉診の技術を身につけることは出来ない。

 

これはもう、やるかやらないかの差であると私は考えている。


数カ月ではつかめないだろう。
1-2年続けてやっとなんとなく分かって来て、脉を診るだけで患者の様々なことが分かるようになるには5年から10年、場合によってはもっと長い年月が必要になるだろう。

 

ただ脉を診るだけでは、面白味に欠けて続かない。
それぞれの脈がどのような身体状況を示しているのか事前に頭に入れておくと、
その脉状に触れた際に記憶として、知識として頭に刻みこまれることになるだろう。

 

ここから、故長野潔氏の著書よりいくつか抜粋したい。
私がクルーズ客船での鍼灸臨床において比較的よく出会うものを厳選した。
他にも様々な脉状がいろいろな身体状態を示しているため、詳しく学びたい方は、長野潔氏の著書を購入し勉強をすることを勧めたい。

 

中脉:浮脉と沈脉の中間にある脉で、「胃の気の脉」であり、消化力を表す脉である。
(この中脉があるかないかの確認はとても重要だと私は考えており、ない場合や弱い場合は、胃への加療を主訴への治療に先立ち行うようにしている。)

 

脉の種類と体の状態

沈脉:ホルモンの分泌、交感神経の機能低下、全身的「虚」を現わす。指頭を強く圧してのみ触れる沈んだ脉である。

遅脉:一呼吸四動、すなわち一分間に七十二が生理的基準になっているが、個人差があるので、六十五~八十五までを生理的脈拍数とし、六十五以下を「遅脉」としている。ただし、スポーツマン等においては五十以下の場合が正常であることもあるので注意すべきである。
疾病においては慢性症や陳旧性の病変、あるいは高齢者の甲状腺機能低下症に現れる。また黄疸のあるとき、頭蓋内圧亢進、頸動脈洞の過敏症候群にも現れる。

数脉:一分間の脈拍が八十以上を「数脉」としている。疼痛、炎症、腫脹、腫瘍、進行性病変、熱等を現す脉である。また交感神経緊張、血液異常、精神の興奮、甲状腺機能亢進症、一過性心房細動、心筋梗塞、心筋炎、貧血、心不全等にも「数脉」を呈する。

虚脉:脉に力がなく弱く沈み、ゆっくりした脉で、退行性病変や体力の衰退を現わす。

実脉:脉に力があり緊張し、炎症、熱等のある進行性病変を現わす。

細緊数:女性ホルモンの低下によって、血管が収縮し副甲状腺ホルモンの分泌が逆に亢進し血中カルシウム濃度の変化を伴う、いわゆる更年期障害症候群の典型的な脉状である。例えば足腰の冷え、背中の張り、肩こり、頭痛、イライラ、眼痛、易疲労、不眠等である。

洪緊数:進行性の関節リウマチや痛風に現れやすく、術者の目の前で痛みを訴える者が多い。「洪・緊・遅」に比して鍼灸の治療効果が現れやすいものの、現病巣や発症プロセスを考察するとともに、患者の生活環境等を含めて半年から一年間の目安をつけて治療することが必要である。

浮緊数:風邪を引いた脉状である。この脉状は左寸口の「浮」が強い時は風邪の第一期であり、右寸口の「浮」が強い時は風邪の第三期である。この弁別は、患者を仰臥位にし験者は患者の左右いづれかに立って、寸口の「浮」の脉状を左右同時に診る。小腸、大腸の脉差がそれによって弁別できる。
左が強い時は「小腸の実」、右が強い時は「大腸の実」である。また種々のストレスや加齢に伴う免疫機能低下が根底にあるので、そのことを念頭に置いて処置すべきである。

緊数:内臓の障害や体制系の障害のため痛みを現わす脉状である。ただし痛み必ずしも「緊脉」とは限らず、慢性的で治りにくい痛みに「軟遅」という脉状がある。

前浮後沈:寸口の脉が浮いて、間、尺と段階的に沈んでいる脉状で、慢性的腰痛を訴えるものに多い。これは足腰が冷えたり、重い・だるい・痛い等の自覚症を訴える高齢の女性に多く、変形性腰椎症や腰仙、及び仙腸関節部の結合組織の硬化、骨盤部内臓の虚血状態、内臓下垂を現わす。

滑:寸口の「滑」が強い時は気管支に炎症があり痰が出ている。寸、間、尺、いずれも「滑」である場合は、胃腸の粘膜の炎症を現わしているアレルギー性疾患にも出やすい。

これ以外にも様々な状態を示す脉状があるが、クルーズ客船で比較的診る脉状を抜粋した。


脉診は、まだエビデンスが無いものも少なくないが、三十万症例を基盤として書かれた故長野潔氏の著書から鍼灸師が学べることは多い。
脉診の技術の高さを知らないそのまま鵜呑みにすることは難しいかもしれないが、私たち鍼灸師がどのようなことを診ているのか参考になると思う。

 

おわりに

私は、脉診に関しては師と呼べる者がいない。
故長野潔氏の著書から学び、日々治療する患者の脉の状態を診ることで、わずかな違いを指頭で感じることができるようになって来た。


自身の精度に関しては、正直疑問が尽きない。
一流と呼べる、脉診を極めた人からするとまだまだ未熟であるが、臨床現場において治療に活用できる一定のレベルには達することができたのではないかと思っている。
この脉診に関しては、今後も知識を元に治療経験を積み重ね、精度の向上を目指していきたい。

 

今回書き出した情報は脉診のごく一部であり、この情報だけで脈診を学ぶのは難しい。
興味を持った方は、ぜひ、故長野潔氏の著書2冊(長野潔氏の名前で出版されているのは2冊だけ)を購入頂き学んで頂くのが良いだろう。


鍼灸臨床わが三十年の軌跡―三十万症例を基盤とした東西両医学融合への試み


鍼灸臨床新治療法の探究


脉診に関しては、師匠と呼べる人を見つけ、一流の術者から学べるのが一番良いのではないかと私は考えている。独学でやってきたからこその、指標があることへの憧れから来る意見だと断っておくが、短期間での成長を望むのであれば、誰かしらに師事するのが良いだろうと私は思う。

現在の若手鍼灸師の中でいったいどれほどの人が脉診を身に付けようと考え実践しているかは分からないが、鍼灸師として長く活躍していきたいのであれば、必須の技術だと私は考えている。

 

脉状と身体内部の状態の関係性について、いつの日か科学が解明をし、機械で正確に脉状が調べれるようになれば、鍼灸治療が体に及ぼす作用の解明に大きな影響を与えるのではないかと思っている。

そして、その先には、機械による中医鑑別の実施と、機械による全自動で鍼灸に類似した刺激を人体に与え、さまざまな症状を改善することに繋ができるようになるのではないかと私は考えている。

 

鍼灸師からすると将来ロボットにとって代わられることになってしまうが、
人類が宇宙へ進出する際に、そういった治療ロボットが出来ていなければ、人類が何千年も積み重ねて来た東洋医学に関する叡智は、地球の滅亡と共に消滅してしまうだろう。

 

何万年も先を考えた時、今後も解明を進め、将来に残していくべき東洋医学の技術の1つを選ぶのであれば、私は脉診がそれにあたるべきであろうと考えている。

話が飛躍し過ぎてしまったが、私はそんなことも考えながら脉診と向き合っている。
この技術はもっと高めて行きたいし、次世代に残して行きたいものである。

 

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