Date - 2019.02.16
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なぜ豪華客船のスパで働くとストレスを感じるのか考えてみた
豪華客船のスパという職場は間違いなくストレスを感じやすい環境だ。
どんな職種であれ、スパで働いていれば誰でもストレスを感じることだろう。
そのストレスレベルはおそらく、陸地で働くのの比ではない。
比べものにならないくらいのストレスを感じる可能性が大いにある。
事実、初めて豪華客船のスパで働く人の多くはストレス太りする。
2度3度とコントラクトを繰り返す人でも毎回船に戻ってくるたびに太り、
バケーションで自国に戻るたびに痩せるなんてのはざらにある。
僕自身も働いてみて間違いなく、豪華客船のスパはストレスフルな環境だと言える。
今回の記事では何故、ストレスを感じるのかを考察してみようと思う。
これから豪華客船のスパで働こうと考えている人が心の準備をする助けになれば良いなと。
Contents
豪華客船のスパという環境
何故ストレスを感じるのかを説明する前に豪華客船のスパがどういう環境なのかということをまずは説明しておこう。
乗る船によって変わって来るが、豪華客船のスパというのは、
少なくとも3つ星、多くは4つ星か5つ星のスパである。
中には6つ星のスパなんていう船もある。
4つ星ホテルとか5つ星ホテルをイメージしてみてほしい。
ホテルオークラだったり、シェラトンだったり、ヒルトンだったり。
4つ星ホテルのイメージがつかない人は、こちらを見てみると良いだろう。
トリップアドバイザーの検索で出てくる4つ星ホテル。
ちなみに5つ星ホテルは、
リッツカールトンやハイアット、帝国ホテルなんかがそれにあたる。
5つ星ホテルの検索結果はこちら。
見て貰えば分かると思うが、決して安くはない金額のホテルだ。
豪華客船のスパというのは、このレベルのホテルに入っているスパと言えばイメージがつくだろうか。
サービスの料金も安くない。
そんな環境でサービスを行って行くというのは、
高いクオリティが常に求められるということになる。
責任感が求められることだと言っても良いだろう。
サービスの質というのはトリートメントだけじゃない。
服装や見た目、言葉遣いや身の振り方も4つ星、5つ星の環境に見合うものが求めらるということだ。
こんな環境でストレスを感じないという人がいるなら、
それはそれで問題じゃないかと思う。
別の理由をあげると、
豪華客船のスパというのは完全にビジネスの環境だ。
ほとんどの人がお金を稼ぐ為に船に働きに来ている。
日本人の中には、「いや、お金とかいいんで。私は世界を見に、旅をしに来ました。」なんて人もいますが、豪華客船のスパでは売上をあげることが求められるので例えお金を稼ぐことにフォーカスしていなくても船のスパで働く以上、売上を上げる努力はせねばならない。
豪華客船の生活の自由度は、
売上によって左右されるので自由な生活がしたい、
船が港に停まっている間に外に出て観光をしたい、
港で遊びたいというのであれば、
その時間を得る為にまずは売上をあげなければならない。
結局、ビジネスを考えなければならなくなるわけである。
それが豪華客船というスパで働くということだ。
ストレスとなる要因を考えてみる
何がストレスになるかは人それぞれ。
ここに書く要因もすべての人に当てはまるわけではないだろう。
ただ、多くの人に当てはまるのも事実。
今後船で働こうと思っている人は、
こういったストレスが襲ってくるであろうことを覚悟しておくべきだろう。
英語。思っていることが上手く伝えられないストレス。
日本で日本語を使って生活をしていると思っていることが言葉にして伝えられないという経験は比較的少ないであろう。
(上司に思ってることを言えないというような理由は除く)
これは単純に何て言えばいいか分からなくて思っていることが伝えられないということだと理解してもらいたい。
これって、経験したことがある人はわかると思うが、
言いたいことを言葉にして言えないというのは結構なストレスである。
要は自分の本当のパーソナリティを表せないということになるので、
本当の自分とは違った人間だと相手に捉えられてしまうということだ。
外国には相手の裏を読む。
相手の心を察するなんていう高等技術が使える人はほとんど居ない。
どれだけ知識があって、母国語では他人を感化させるような素晴らしい言い回しができたとしても、英語が拙ければ、それはまず相手に伝わらない。
人生経験の豊富な方や自国で人に頼られる役職に居た人であればあるほど、
悶々とした思いを抱えることになるだろう。
これはかなりのストレスになる。
長い労働時間。肉体的なストレス。
日本には労働基準法があり、
1日の労働時間は8時間までと決まっている。
(実際には8時間以上働いている人が多いのではあるが)
海洋上の法律:MLCでは1日の労働時間は12時間まで、
1週間で80時間以内と決められている。
単純に豪華客船は労働時間が長いのでその分疲れやすい。
スパでは、シーデイは朝の7時半から夜の9時、9時半まで働くことになる。
1日12時間が標準だ。
ポートデイでは、半日オフがあったりするが、
半日オフの日でも6時間は働くことになるので、
日本の労働時間から考えるとまったくオフじゃない。
丸1日休みなんて運が良くて月に1度、
航路によっては2−3ヶ月に1度なんて場合もある。
僕が今まで働いた船で1番忙しかった船では7ヶ月の契約の間に丸1日休みが2回しかなかった。
スパは丸1日休みをもらえる可能性がある分まだマシだ。
他の職場では丸1日休みなんてものは存在しない。
契約の期間、5ヶ月だったり、6ヶ月だったり、8ヶ月だったりするのだが、
その間毎日働くのが一般的だ。
単純に豪華客船で働くのは肉体的ストレスがかかる。
だからこそ健康であることが船で働く第1条件となっているわけである。
家族や友人から長期間離れる。精神的ストレス。
1度豪華客船に乗れば数ヶ月拘束されることになる。
その間、ほとんどの人は家族に会えないし、
親しい友人と会うことも出来ない。
もちろん、船内で友人や恋人が出来る人もいるが、
昔から知っている気心の知れた人と会えないというのは大きなストレスになる。
僕は、昔から独りでいることが好きだったので、こういったストレスはまず感じないが、
人によっては家族や友人と会えないことにストレスを感じることだろう。
特に新しい友人を作るのが苦手な人からすれば、
豪華客船はなかなかに難しい環境だ。
なんせ、豪華客船は人の入れ替わりが多い環境な為、
たとえすごく仲良くなっても数ヶ月で別れが待っている。
深い繋がりが出来れば出来るほど悲しみの数も多くなる。
まったくもって精神修行の場なのか、という環境である。
自由に行きたいところへ行けない。行動制限のストレス。
豪華客船はゲストとして乗る分には動く海洋ホテルという最高の環境かもしれない。
しかし、働く側からすれば、動く監獄と言ってもいいくらいの環境だ。
しっかりとした給料がもらえて、
さまざまなアクティビティがあり、
さまざまな国の港に行ける分、
監獄よりはずいぶんマシではあるが、
考えてみればただの上位版なだけで、
じっさいのところ豪華客船と監獄は似ている部分が多い。
第1に。
豪華客船で働く人はみな船に乗る初日にパスポートを預かられる。
脱走しないようにだ。
実際に今まで港で逃げた人が居る。
だからクルーへのセキュリティチェックはゲストより厳しくなっている。
まさに拘束されていると言える環境である。
第2に。
いろいろな都市へ行くと言っても、
出航前には船に戻らなければならない。
夜の街に出掛けたり、
映画館に映画を観に行ったり、
コンサートやイベントに参加することなんて出来やしない。
そんな生活を7ヶ月、ないし9ヶ月しなければならないことを考えてみて欲しい。
1週間だけ、1ヶ月だけならまだしも長期間そんな環境にいれば、
気付かぬうちにストレスは溜まって行く。
クルーバーに行くか、仲間内でパーティーをするか、ジムで身体を動かすくらいしか船内で出来るストレス発散方法はない。
だからこそ、コントラクトを終えた時の解放感はものすごいものがある。
出所した人はこんな気持ちなんかなって。
際限のない売上あげろプレッシャー。葛藤ストレス。
はじめに書いたように豪華客船スパというのは、完全にビジネスの職場だ。
健康に携わる場所でもあるが、ゲストが満足すればそれでOKではなく、
満足度を上げつつ、さらに売上が求められる。
船によっては満足度以上に売上を求めてくる場合もある。
患者さんを助けたいという純粋な思いで鍼灸師やマッサージセラピストになった方、
お客さんの笑顔が見たいという思いでヘアドレッサーやビューティーセラピストになった人からすると、
売上ばかり求められる職場はストレス以外のなにものでもない。
しかも、サービスだけでなく、オイルやボディジェル、フェイシャルプロダクトを売ることを強く求められる。
ゲストに親身に接する真面目な人であればあるほど、
心の負担となりやすい環境だと言える。
セラピストとしての能力だけではなく、
セールスマンとしての能力が求められるのが豪華客船のスパという環境だ。
学びは多い。
しかし、それと比例してストレスは重くのしかかってくる。
それが豪華客船のスパで働くということなのだ。
船内での人間関係。人間関係のストレス。
ほとんどの場合、人がストレスを感じる理由は人間関係にあると言われている。
上記の理由は、個人の肉体的問題、葛藤といった心の問題から起きるストレスで、
言わば個人によってある程度コントロールが出来る種類のストレスであるが、
人間関係のストレスは、別もの。
自分自身ではコントロールできない類のストレスである。
船は閉鎖空間だ。
職場で毎日同じ人と顔を合わせるし、
仕事後も船から降りれるわけじゃないから、
プライベートでも同じ人と顔を付き合わせることになる。
気の合う人だけなら問題はないのかもしれないが、
スパで働く人全員が気が合うなんて奇跡みたいなことはまず起こらない。
一つのスパには20人前後、
多いと50人近くセラピストが働いている。
8割以上は女性だ。
みんなが仲良く、トラブルが一切ないスパで働けることなんて宝くじに当たるより確率は低いだろう。
それに豪華客船は常に人が入れ替わっている環境。
たとえ、一時的にとても良い環境になっても人が変わるたびにそれは変化して行く。
契約の期間中ずっと快適な環境であることなんてまず無いだろう。
スパ以外の人間関係もストレスの原因となり得る。
特に女性であれば、言い寄ってくる男性は多い。
なにせクルーの男女比率は圧倒的に男性の方が多いのだ。
街であれば、一度断ればその相手とまた出会う可能性はあまり高く無いだろうが、
豪華客船は何度でも顔を付き合わせることになる。
特にクルーバーによく行く人であればその可能性はさらに高くなる。
これがめんどくさい人間関係になりやすい要因だ。
付き合ってたカップルが喧嘩別れした後なんて、
まあ!めんどくさい。
本人同士だけじゃなくて周りも迷惑を被る。
そんな人間関係を避ける方法は、仕事が終わったら自室にまっすぐ帰って外に出ないという引きこもるくらいしかない。
しかし、長期間引きこもるのは心にも身体にも良くない。
外に出つつ、めんどくさい人間関係に巻き込まれないようにするには、
気の合う仲の良い同性&異性の友人を見つけていつもグループで行動するということだ。
そういう友人が見つけられなければ、豪華客船は監獄並みに辛い環境となり得るだろう。
なぜ、僕は豪華客船で働くことにストレスを感じていたのか?
ここからは、僕個人の話になる。
僕は基本的に誰とでも良い人間関係を作ることが出来て、
鍼灸師という仕事柄自由な時間も多く作れる。
他のスパのセラピストや他のデパートメントの職種と比べてストレスを感じる要因は少ない。
それでもやはり、ストレスを感じていた。
だからこそ、豪華客船での仕事を辞める選択をした。
僕が何にストレスを感じていたかというと、
1番は仕事だ。
人を、困っている人を助ける為に鍼灸師になったのに、
お金を持っている人じゃないと自分が出来る最大限の治療をしてあげることが出来ない。
自分が治せると分かっているのに、
それを金額が理由で治療を選択しないというゲスト(患者さん)がいることにストレスを感じていた。
僕は治療をすることが好きだ。
お金をもらわなくたって治療をしても良いとすら思ってる。
しかし、プロとしてスパで鍼治療をやっている以上、
仕事量に見合った金額をもらわないわけにはいかない。
それが今まで治療をしてきた人への礼儀だし、
同じスパで働いているセラピストに対しての礼儀でもある。
だけど、やっぱり、お金が理由で治療を受けない人がいることは事実としてあった。
もし患者さんを治療することからお金を稼がなくても良い環境を作ることが出来れば、
このストレスはなくなることだろう。
残念ながら、豪華客船で働いていては絶対起こり得ない。
普通の治療院で働いていても起こり得ないだろう。
だけど、そんな理想を現実にすることを諦めたくない。
だからこそ僕はそんな環境を作る為に豪華客船で働くことを辞めた。
別の仕事に対するストレスで言えば、
短期間でしか患者さんを診ることが出来ないから、
どうしても出来ることが限られているということ。
自分の知識と治療技術があれば、どれだけのことが出来るのかは理解しているつもりだ。
しかし、豪華客船という時間が限られた環境ではそのポテンシャルを全て発揮することは出来ない。
出来るのに時間の制約の為に出来ないというのは、
思いのほかストレスになる。
これは、自分が成長したからこそ出て来たストレスだ。
最初に船に乗った時は出来ないことの方が多かったからこのようなストレスはあまり感じていなかった。
つまり、豪華客船から次のステージに移る時が来たということなのだろう。
こればかりは環境を変えるしか解決方法はない。
人間関係のストレスは、幸いなことに僕は無縁だった。
良き友人に毎回恵まれ、楽しい時を過ごし、今でも世界中の友人と連絡を取り合っている。
労働時間のストレスも、日本で働いていた時の方が長く働いていたのでそれほど感じなかった。
英語が思うように話せないストレスは最初の頃はもの凄いものがあったが、
3度目、4度目の契約ではそれもほとんどなくなり、ここ1−2年は英語に関するストレスは皆無と言っても良いくらいだった。
僕の場合、仕事以外の1番のストレスは、行動制限によるストレスだったと思う。
アラスカクルーズでは週3で山登りに行けたので大したストレスには感じていなかったが、
カリブ海クルーズは、大して好きでもないビーチに行くくらいしか出来ることがなかったので、
かなりのストレスがあったと言える。
僕は海より山が好きなので、
海風を感じながらぼーっとすることで緩和できるストレスなんて微々たるものでしかない。
やっぱり僕は山に行きたい。
また、いろいろなアイデアが浮かんでいたこともあり、
船ではそれをすぐに行動に移すことが出来なかったこともストレスになっていた。
ネットの制限もあったし、アイデアを話したくてもすぐに話せないというのはストレスになるものだ。
最後の契約を終えて船を降りた時はものすごい開放感があった。
今まではもう1−2ヶ月働いても良いかなと思たけど、
今回は早く船を降りたくてしょうがなかった。
それは、治療以上にやりたいことが出来たからだろう。
船で働いているとなかなかに勉強の時間やこうして頭の中にあることを文字にして書き出す時間がないのだ。
僕は考えることが好きなので、
こう言った書き物に没頭する時間というのはストレスを軽減するのに大切な時間だったりする。
そういう時間がなかなか取れないことが僕にとってのストレスだったと言えるかもしれない。
おわりに
豪華客船は学ぶことが多いのに引き換え、ストレスも多い環境だ。
成長を望む人にとっては良い環境と言えるが、失うものもあるというのが事実だ。
一度船に乗れば、帰国後に同じものを見たとしても感じることが変わってしまっているだろう。
そのギャップに苦しむ人は案外多い。
旅人が旅から地元に帰って来たのにまた旅に出たくなる気持ちと似ているのかもしれない。
一度船に乗れば、良くも悪くもあなたの世界観は変わる。
世界観が変われば、二度と前の状態に戻ることは出来ないだろう。
何を求めるかは人それぞれだが、
豪華客船で働くのはあなたの人生を変える劇薬となり得る。
それを知った上で豪華客船にチャレンジしてもらえたらと僕は思っている。
間違いなくストレスフルな環境だ。
ただ一つ言えるのは、人間が成長するにはストレスが必要だと言うこと。
ストレスは悪いものではない。
人間にとって必要不可欠なものでもある。
もちろん、多過ぎれば身体や心を壊す原因となり得るのは事実だろう。
自分がなぜ豪華客船で働くことにストレスを感じていたのかと向き合ってみたが、
今となってはそれは自分の成長にとって必要なことだったのだと思える。
“人は快適な環境にいるだけでは成長することは出来ない”
“快適な環境から抜け出せ!それを続けることが成長へとつながる”
最後にこの2つの言葉を送ることで締めとさせて頂こう。
MITS
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