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Date - 2020.06.14

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【豪華客船鍼灸師から訪問診療クリニックの医療事務にジョブチェンジして1年経って思うこと、学んだこと。】

豪華客船のスパという職場から離れて1年4ヶ月
医師が訪問診療を行うクリニックに医療事務として入職して1年1ヶ月が経ちました。

全く違う環境と言える中で仕事をし始め、
日々の生活も大きく変わったし、
仕事内容も全く違うものとなりました。

その中で色々と感じること、思うところがあり、
1年という区切りを越えた今、一度自分の中の想いと向き合ってまとめておこうと思います。

1年分の話なので、これまた長くなると思います。
お時間がある時にゆっくり読んでもらえたら良いんじゃないかなと思います。
ゆるりとお付き合いください。

 

 

何が違うのか

むしろ、共通するものの方が少ないんじゃないかと思います。

豪華客船鍼灸師として情報発信をしてきたのでご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、今回の記事が初めてという方もいらっしゃると思うので、
簡単に僕の以前の仕事と今の仕事について、以前の生活と今の生活についてまとめてみます。

 

豪華客船鍼灸師時代の仕事

基本的に、船での仕事は、鍼治療と集客です。
日々、スパで新規のゲストを集め、鍼治療を受けてもらい、どんどん治して行く。
鍼治療の面で言うと、5年間6回の契約の中で、総数4000人以上のゲスト、200近い症状・疾患を治療して来ました。

また、短い期間での集客とリピーターの獲得が重要な豪華客船のスパという職場では、ビジネスについても大いに学び、また、実践の場でもありました。

僕は基本的に日本から遠い航路の豪華客船に乗っていた為、日本人ゲストに出会う事はほとんどなく、すべての業務を英語で行っていたので、英語での仕事というのも今とは大きく違う点だと言えます。

 

現在の仕事

今、僕がやっている仕事は、患者さんの自宅や介護施設へ伺い訪問診療を行う医師のサポートです。医師の診療に同行し、カルテ入力補助や物品の管理、医師がスムーズに診療できるよう補助をすることが主な仕事です。

 

医師の診療に同行しない日もあり、その日は事務所で書類業務、内部情報のやりとりや電話などで関連職種のケアマネさん、訪問看護師さん、薬剤師さん、それらの事業所の事務の方々とやり取りをしたり、翌日以降の診療の準備、様々な書類作成やスケジュールの管理を行っています。

医師が診療に集中できるような環境を作り、関連職種と様々なやり取りをして患者さんが安心して暮らしていける環境作りを行っていると思ってもらえると良いです。

 

一言で言うと、
人を治す最前線から、最前線で働く人のサポートをする仕事に変わったと言うことですね。
また、東洋医学から西洋医学へとやることが変わったと言っても良いのかもしれません。

 

豪華客船鍼灸師時代の生活

船に乗っていた時の生活は、世界中の色々な景色を見て、色々な街を訪れ、色々な国の人と交流を持ち、朝は船上から水平線に上る朝日を見て、夕方には空一面を赤く染める夕焼けを見て、夜になればクルー用のバーで友達とお酒を飲んだり、船内のショーを見たり、バンドの演奏を聴きに行ったりと自然と芸術に触れる機会が多かったです。

 

食事の面で言うと、船では自分で料理する事はなく、船員用の食堂かゲスト用の食堂、もしくは船内のレストランでご飯を食べていて、
船を降りた時は港町にある様々なレストランにいくことが出来て、豪華客船時代は色々な国の料理を食べていました。逆に日本食を食べる機会はあまりなかったです。

基本的に仮住まいで、船内に自分の部屋はあれど、実家に自分の部屋はあれど、
家具を買うこともないし、生活のために買うものはほとんどなく、ホテル暮らしに近かったと思います。

また、船の契約と契約の間バケーション中は、旅人生活で、バックパックを背負ってドミトリーを転々としたり、車を借りてロードトリップで色々な街や国立公園によりながらモーテルを転々としたり、キャンプしたりもしてました。

一言で言うと、1箇所にとどまる事なく転々とした生活を送っていました

 

 

現在の生活

今の生活は、仕事中心で、仕事以外で外出する事はほとんどなく、
家でU-NEXTで映画やドラマ、アニメを見るか、本を読んでるか。
2月からは恵那のクリニックに住み込みで仕事をしていたこともあり、
クリニックから出ることもほとんどありませんでした。

最近、オートバイを買ったので、そろそろ色々な場所へ出かけようかなと思っていたところですが、COVID-19の影響もありまだまだのんびりしようと思ってます。

食事の面で言うと、日本での暮らしに戻ったこともあり、日本食を十分に満喫してますし、
自炊をすることも増えました。もともと料理をすることは好きなので、
簡単なものではありますが、色々と作って食べてます。

以前と比べるとどこかへ出かけることがめっきり減りましたし、芸術や音楽に触れる機会もほとんどありません。豪華客船時代を華やかな暮らしと言うのであれば、今は地味な生活なのかもしれません。

個人的には今の暮らしが気に入っているし、常にマイペースで生活出来ているので性に合っているのかなと思います。またいつの日か、気ままな旅もしたいですけどね。

 

 

医療事務として働いて分かったこと。

患者さんと向き合うという点での医療の最前線で働く医師、看護師、鍼灸師、その他様々な医療職種が患者さんへ必要な治療・看護が出来るのは、その陰で様々な職種がサポートしているから

質の良い医療を届けるには、最前線で働く人の傍で彼ら彼女らをサポートする人が欠かせないということ。

これは最初から頭で理解していたことではあったけど、実際にサポートする側の仕事をして、改めて重要さを感じています。
また、そんな表からはなかなか見えない仕事をする人たちの環境の改善も必要だと感じています。

 

以前、社会人アメフトチームでトレーナーとして働いていた時もそうだったけど、
サポートする側の人は、誰よりも早くから仕事を始め、誰よりも遅くに仕事を終えて帰ります。

サポートをされている選手(訪問診療で言えば医師)は、それを知って感謝していますが、
表側しか見えない選手のファンや観客(訪問診療で言えば患者さん)は、裏側の人たちの働きようはなかなかわかりません。

直接感謝される事は少なく、また労働時間に対する給料も決して高くありません。

 

給料とは、労働時間に対して出るものではなく、仕事の重要度/責任に対する対価として支払われるので、それは仕方のないことではあるのですが、医療事務や介護職(スポーツ現場で言えばトレーナー、スタッフ)の給料や労働時間などの待遇はもっとよくなって良いのではないか、むしろ良くするべきだと個人的に感じています。

しかし、それは、たった1人の想いだけで実現できるものではないし、
乗り越えないといけない様々な壁があるということが医療事務という仕事を始めてわかりました。

 

 

また、訪問診療という現場レベルで言えば、技術的にはすでに出来る事、業務効率が改善できることがあっても法律の整備が追いついていないせいで出来ないことが多々あります。

法律の問題だけでなく、連携先の理解度やネット環境の問題でできないことも多いです。
COVID–19の影響で改革の兆しが見えているとはいえ、日本はまだまだ紙社会で、
無くせるはずのペーパーワークが大量にあります。

 

それは、僕が働くクリニック単体で言えばすぐにでも改善できることではあるのだけれど、役所仕事がほぼ紙でやらなければならない為に出来ないことが多くあったり、関連職種では設備が整っていないという理由でオンライン化が出来ないなんてことも多々あります。

今までの紙での仕事に慣れている人は、新しいことを始めることへの抵抗感があったり、PCやネットに疎い人からすると難しく感じてしまい一歩目がなかなか踏み出せなかったり、長期的に見ればメリットが大きいのに目先の出費が出せずオンライン化が出来ないような事業所も少なくないです。

 

これらの問題は、自分たちがやれば解決する問題じゃなく、
相手の環境を理解した上で、根気よく相手をサポートして行かなければ解決出来ない問題です。

それをするには相手の信頼を得なければならず、
お金にならない仕事をしなければならないということでもあります。

本来なら行政がやるべきような業務内容なのかもしれませんが、
その行政が必要なレベルに全く追いついていないというのが現在の日本の現状でしょう。

 

うちのクリニックの話をすると外の改革だけでなく、
内側の改革も必要なのが現状です。

詳しい事はここでは書けませんが、今の職場を個人的に理想とする職場環境にするには変えなければならないことがたくさんあります。

 

幸運な事は、それをトップが理解してくれていて、
様々なことを僕にやらしてくれていることです。

本当に自分が思っていたよりかなり早いペースで様々な仕事をこの1年で任せてもらえるようになりました。尊敬する先生方と一緒に仕事が出来ており、多くのチャレンジがあり、そんな職場に感謝しています。

 

 

鍼灸師という立場から見る現在の訪問医療の問題点

一度、鍼灸師という立場からこの1年間見てきた訪問診療の現場の問題点をまとめてみようと思います。

訪問診療に関わる医師、訪問看護師、ケアマネ、薬剤師、医療事務といった人々の多くは、患者さんの為を想って考え行動していらっしゃる方が多いです。
現場に素晴らしい人が多いのは確かなのですが、制度的にはまだまだ改善点が多いとおもいます。

現実問題として、患者さんが望むような環境を毎回提供できているかと言うと、そうではないことの方が多いのではないかと思います。
患者さんの安全を考えて、周りの人は、様々な対策をしてくれていますが、
果たしてそれが本当に患者さんの望むものなのか、患者さんの望むような最後を迎えさせてあげることが出来ているのかと考えずにはいられません。

 

(この表現はだいぶ過激な表現に映るかもしれず、僕が言いたいことをうまく伝えられているか不安ではありますが、あえてそのまま書きます。)

認知症になりだんだんと自分で考えることが難しくなって行く人が多いので仕方ない部分もありますが、施設に入っている人々を見ていると自分で考える力をどんどん削ぎ落とされ、欲望を抑制され、周りに迷惑をかけず、周りと同じことをできる人になることを暗黙のうちに強制されているのではないかと感じます。

 

早くお迎えが来て欲しいとおっしゃる方の言葉が毎回痛いほど心に刺さります。
自宅で、住み慣れた環境で最後を迎えられれば良いですが、
多くの人が同居する施設へ入居するとなると、人によっては苦痛で仕方ない環境となってしまうかもしれません。

 

正直な自分の気持ちを言えば、僕はどんなに年老いても施設へは入りたくないです。
入るとしても小規模多機能型居宅介護のような施設が良いです。

先日、ネットニュースにも取り上げられた↓
https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/grundtvig-ramen?utm_source=dynamic&utm_campaign=bfsharefacebook
このような自分の意思を尊重してくれる施設なら良いですが、そうでなければ安楽死などで自死を選びたくなる人々の気持ちも分かります。

(個人的には将来は、安楽死で自分の最後の刻を自分で選びたいと思っています)

 

訪問診療を行っている多くの医師が想っているところでもあると思いますが、
身体の健康だけでなく、心の健康、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)を如何にあげることが出来るかが人生の終末期においてとっても重要なのだけれど、
残念ながらそれを実現できて、自分の望むような最後を迎えられる人は少ないのが現実です。

生かし続けることよりも、望む最後を迎えさせる為に時には治療をしないという選択肢が在宅診療では大切です。

 

しかし、そうなった時、西洋医学ではできないことの方が多いです。
そして、そこで活きてくるのが東洋医学である鍼灸治療やあん摩マッサージ指圧といった手技なのですが、現在の保険制度の中では、医師の医療行為と最善の形で併用することが出来ません

 

鍼灸師として出来ることがたくさんある状況を目の前に、
医療事務として働いている僕は何もすることが出来ませんでした。

技術的に出来ても医療事務として働いている以上、それをする時間がない。
また、現在の仕事柄するべきではないというのが現状です。
本当に歯痒い場面がこの1年数多くありました。

あの場面で鍼灸師として治療ができれば。
あの場面で違った保険制度であれば。と思った事は数知れません。

西洋医学と東洋医学の併用が1番活きてくる環境が在宅医療の現場なのではないかと感じています。

 

僕が働くクリニックの医師たちは僕の考えに理解のある方が多く、
少しではありましたが、今後のスタンダードになり得る可能性のあることを何度かやらせてもらうことが出来、将来の可能性を強く感じています。

これは、いち現場でどうにか出来るものではなく、
現在の医療制度、保険制度を変える必要があるので、
僕の頭の中にある構想を実現させる為には、現状不可能に近いような様々な制度改革を行っていく必要があり、それは鍼灸業界の改革だけでなく、日本の医療業界、介護業界を巻き込んだ改革を行う必要があります。

 

1人では実現不可能ですし、様々な人の協力があってもすぐに実現する事は難しいのが実際のところです。十数年単位でやって行かなければ出来ないことだと感じています。

ただ、鍼灸師だからこそ見えているこのビジョンは、きっと今後の終末期医療を考える上で一つの突破口になるんじゃないかと考えています。

今の僕がやるべき事は、
いつの日か頭の中にある構想を現実のものとする為に実績をつけ、様々な人との繋がりを作り、議論を重ねる事でより良い構想を練り上げ、人々が人生の最後を迎える時により良い体制を作れるよう一歩一歩進み続ける事だと思っています。

まず、自分の働く環境でできる限りのことをし、理想的な環境を作り上げる事。
その上で周りの関連職種と手を取り合い、より良い医療・看護・介護体制を作り上げ、地域医療の新しい形を生み出し、成功事例を作った上で制度改革を行う。
それしかないと思っています。

どれだけの労力と時間がかかるかはわかりませんが、
人々がより良い最後を迎えられるようになる為、自分が理想的な人生の最後を迎えられるようにする為にも人生をかけて医療体制の改革を行っていきたいと今は想うようになりました。

 

 

ご報告とこれから。

現在僕が医療事務として働いている訪問診療のクリニックが所属する医療法人笑顔会に入職して1年が経ちました。

初めは実家のある名古屋にある笑顔のおうちクリニック名古屋で仕事が始まり、
半年後の2019年11月からは、医療法人内で1番新しく出来た岐阜県恵那市にあるNEXWEL恵那地域笑顔共創クリニックとの兼任、2月からは恵那のクリニックに専任との形で働いていました。

 

そして、2020年6月より、同じく医療法人笑顔会に所属するNEXWELさいたま笑顔のおうちクリニックに転勤する事となりました。

拠点は変われど、やる事はほとんど変わらないですし、医療事務としての仕事は、1つの拠点だけでなく、他の拠点のクリニックの患者さんの業務をすることがあり、さいたまに居ながらにして名古屋や恵那の患者さんに関わる業務も行います。

 

特に、恵那のクリニックでは、僕が中心となり様々なことを進めていたこともあり、
引き続き多くのことを遠隔でやりつつ、恵那のプロジェクトを進めていく予定です。

恵那は5年10年単位で進めていく必要がある様々なプランがあるので、
正直言えばもう少し長く現地で行動を起こしたかったところではありますが、
さいたまのクリニックでも変えて行かなければならないことが多く、
今後はさいたまメインで働くこととなりました。

 

2013年以来の関東在住となりますので、関東にお住まいの方には会いに行きやすくなりました。お近くの方、COVID–19の影響が落ち着いた頃また是非お会いしましょう。

 

実は、関東への転勤は、以前から事務長より話を受けていました。
ゆくゆくは、さいたまと松戸にあるクリニックを、関東中心で仕事をして行って欲しいと。

入職した頃は、今の僕の仕事状況になるまで2年くらいはかかるのではないかと事務長と話していたのですが、人事異動が重なったこともあり、想定より1年ほど早くなりました。

まださいたまに来たばかりなので、まずは現状の把握と改善案の策定が必要な段階なので、すぐに行動を起こせるわけではありませんが、入職してからずっと考えていた職場内の仕事環境改革にボチボチ乗り出せるんじゃないかと思っています。

この1年、事務長を始め、上司の方々に自分の考えを示しつつ、与えら得た仕事以上に自分から仕事を作り出しこなして来たおかげで、信頼を得ることが出来たのではないかと感じています。

1年間で3拠点を移動し、医療法人全体のある程度の把握も出来、やっと改革をするのに必要なことが見えてきたのかなと思います。

ここからは、その実現に向けて歩みを進めるフェーズに入ってくるのかなと思います。
またどんどん仕事が忙しくなりそうではありますが、豪華客船で働いていた時とは違った充足感を感じていますし、何より、より自分らしく働くことが出来ているんじゃないかなと感じています。

 

周りの人からは表情が変わったと言われるようになりました。

豪華客船鍼灸師時代までを第一の人生だとし、
今は第二の人生を歩んでいるつもりで日々生きています。

今後、色々な面で変わっていくことが増えていきそうな予感がありますが、
どんな時も芯の部分は変わらず、自分らしく生きることを忘れずにこれからの人生を歩んで行こうと思います。

 

船を降りた時に頭を丸め、それから髪をずっと伸ばし続けて来ているので、
髪が伸びた分が僕が新しい人生を歩んできた長さのとも言えます。
今の僕がやろうとしていることの区切りがつくまでは髪を伸ばし続けようと思っているので、
まだまだ髪は長くなりそうです。

久しぶりに僕に会う機会がある人は、そんな僕の髪の長さも気にしてもらえたら嬉しいなーなんて密かに思っています。

長い文章になってしまいましたが、最後までお読み頂きありがとうございました。
もし、今回の記事にピンと来る人が居ましたら、是非お会いしましょう。

ピンと来なくても、MITSにまた会いたいなと思った方は是非ご連絡ください。
さいたま付近にいますので、そのうちご飯でも食べながらゆっくりとお話ししましょう。
(待ってはいないけど)お誘いお待ちしてます。

MITS


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ブログでは鍼灸・医療・身体の事を中心にMITSが実際に経験したことから学んだことを書いています。

時には旅の話や日頃考えていることなど医療と全く関係ないことも書いています。

 

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