blog

Date - 2017.08.29

Category -

豪華客船に乗る鍼灸師に必要な心構え

年々、豪華客船に乗る日本人鍼灸師が増えています。
約4年客船で働いている身からすれば、
嬉しい限りです。

初めて鍼灸師が豪華客船で働き始めたのは2004年
10人の鍼灸師が始まりでした。

きっかけは、

豪華客船で働いているとあるオフィサー(要職の人)が坐骨神経痛を患い、
それが鍼で治った事に感銘を受け、
こんなに素晴らしい治療なら是非に船でも
という事で鍼灸師が豪華客船での仕事を得ました。

最初の10人の鍼灸師のうちの2人が、
今の僕のボスです。

船での仕事内容は、
治療、集客、治療室の掃除管理、レシートの作成
と一般の職場と大して変わりません。
雑用が少ない分仕事量はむしろ少ないです。

受付やマネージャー、他のセラピストがいますので、
1人で開業してやるよりよっぽど楽だと思います。
確定申告や税金対策なども無いですし、
クリニックの雇われ鍼灸師より自由度が高いけど、
個人事業主より事務作業が少なく、
なおかつ個人開業しているかの様に働く事が出来ます。

書いてるとなんて恵まれた環境なんだと改めて思います。

労働時間は週52時間と契約ではなっていますが、
基本的にスケジュール管理は自分で出来るので、
休みも自分でコントロール出来ます。

まあ、仕事で結果を出せてなかったり、
初めて船に乗ってすぐの頃はマネージャーにスケジュールを管理されることになりますが。

忙しい船に乗れば好きなように休みの時間をコントロールしても治療数が多いので
それに伴い労働時間が増え、
僕の場合週60時間くらいは働いてます。
基本契約中毎日働きますが、
作ろうと思えば1日休みも作れます。

でも、給料は歩合制なので、

治療数が多ければ
働けば働くほど給料が増えるので、
労働時間が長いことについては特に不満は無いです。

もともと日本で働いてた時は仕事を掛け持ちしてたのもあって、
週80-100時間働いてたので、
これくらいは僕にとっては全くキツくないですね。

そんな船での仕事ですが、
勝手が違う分、
陸のクリニックで働いているのと同じ様に働いていてはうまく行かないことがあります。
根本的に考え方を変えないといけない部分も出てきます。

ということで本日の本題
船で必要な心構えを紹介していきます。

 

 

1. 日本の常識を捨てよ

そもそも豪華客船という場所は日本ではありませんので日本の常識が通用するはずがありません。
しかし、人間誰しも行動を起こす基準は無意識に自分の常識から成り立っています。
船に乗ってすぐは勝手の違いに戸惑うことでしょう。

 

2. とりあえずやってみよ

船の生活がうまく行かずに辞めて行く人、
長続きしない人は、大体自分の殻に閉じこもって何もやろうとしない人です。
せっかく世界に出てるんだからとりあえず何でもチャレンジしたらいいんです。
そうすれば周りがよく遊びに誘ってくれて楽しい船の生活を送る事が出来ます。
生活が楽しくなればポジティブになり、
良い運気が巡り、仕事の調子も上向きます。

 

3. とりあえず何でもいいから話せ

船に乗る日本人鍼灸師には留学経験の無い人が多いでしょう。
頑張って英語の勉強を日本でして面接に受かって、やっとの思いで船に乗った。
そんなあなたにまず待ち受けているのは、周りの話すスピードが速すぎて何を言っているか聞き取れず、一体今まで自分は何の勉強をしてきたのかという絶望感です。
ちょっと誇張しましたが、
半年間の留学経験があってある程度英語が話せる様になっていた僕でも
初めのうちは会話の3割聞き取れれば良い方というレベルでした。
僕が習ったのはアメリカアクセントで、
船の英語はブリティッシュアクセントだったのも多少関係してますが、
それでもいきなり英語のみの職場に入って日本語で話すのと同じように仕事をするのは無理です。
ですが、だからこそ、言いたい。
とにかく英語を話せと。
話さないと上達などしません。
寝て起きたら流暢に英語が話せる様になったなんて奇跡はまず起こりませんので。

 

4. 働いている場所がSPAであるということを忘れるな

たまに勘違いしている鍼灸師がいます。
確かに僕らはドクターとして船でSPAで鍼治療をしています。
しかし、SPAで働く以上ゲストを満足させるというのが最低条件です。
どんなに効くからといってもゲストが満足できない治療をすれば苦情に繋がります。
つまり、刺激量の強い治療をする際はしっかりとコミュニケーションを取ってゲストに理解してもらわなければなりません。
さもなければゲストより治療が痛かったと不満がマネージャーもしくはゲストサービスデスクへ行き、治療費の返金ということになりかねません。
実際僕にもありました。
鍼なんだから痛くて当たり前と思う方もいるかもしれません。
しかし、ここはSPA、そして日本ではありません。
その事を常にお忘れなく。

 

5. 初回の契約は修行だと思え

今現在、僕の働いている会社は10を超えるクルーズ会社、160隻を超える豪華客船にSPAを入れています。
そのうち鍼灸師が乗っている船の数は110隻ちょいです。
それだけ船の数があれば、
忙しい船と忙しくない船がある事は予想出来るでしょう。
その通りです。
忙しくない船に乗ればビジネスは厳しいです。
大体の場合日本人鍼灸師はビジネスの厳しい忙しくない船に初回の契約では乗せられます。
2度目からは自分である程度選ぶ事が出来ますが、
1度目の船はまず思う様に行かないでしょう。
イメージしていたクルーズ生活とのギャップに不満を抱き辞めていく鍼灸師もいます。
そうならない心構えとして、
初回は修行だと思って耐え、もがき苦しんでください。
その経験が必ず後の船生活に、
後の人生に活きてきます。
船は楽して稼ごうという人向きではありません。
本気で成長したい人にはもってこいの職場です。

 

6. いつやるの?今でしょ!

1クルーズの長さは乗る船によって違います。
しかし大体が10日以下のクルーズです。
治療をオファーする際にはなぜこのクルーズ中に治療を受けるのかをゲストに理解してもらわねばなりません。
船を降りてから鍼治療を受けようと思ってもらうのではなく、
今ここで治療を受けてもらうのです。
これは他の職業にも言えます。
そしてそれは僕ら自身にも言えます。
豪華客船に乗っていれば色々な国、
色々な街へ行く機会に恵まれます。
各国の文化に違いがある様に各港町にも特色があります。
もちろん港でできる事も違います。
せっかくの機会ですので出来る事全てやって船の生活を楽しんでください。
お金は貯めるよりも経験に使ってしまった方が良いですよ。

 

7. 船で近づいてくる女はビッチ、男は女たらしだと思え

これは極論かもしれません。
もちろん素晴らしい女性、
人間性の優れた男性がいるのも確かです。
しかし、船では一時の快楽に身を落とす者が多くいることも確かです。
男女が共に過ごせば恋愛感情が生まれるのは自然な流れ。
船で人生の伴侶に出会う方もいます。
しかし、大半は船に乗ってる間だけの付き合い。
船を降りると共に関係は解消。
母国に彼氏彼女、奥さん旦那さんがいるけど、
船での関係は別と割り切って男女の関係を持つ人が多くいるのが豪華客船のクルーの現状です。
それで良いという方もいるでしょう。
選択は自由です。
しかし、本気で恋をしてしまった相手がそんな相手だと報われません。
報われない恋をして傷ついてきた友達を何度も見て来ました。
船で働く間は相手との距離感を見極める事が大切です。
外国の人達のアプローチはとても積極的です。
日本男子も見習うべきだと思うくらいです。
そんな熱烈なアプローチを受けて最後には捨てられる。
絶対とは言わないが、その確率が高い事は常にお忘れなく。
船で出会い結婚まで行くカップルはきっと5%もいないですよ。
特にイタリア人には注意です。
逆にオランダ人は誠実な人が多いですよ。

 

8. 船の仕事はビジネスだ、時には情を捨てよ 

会社やスパマネージャーからの鍼灸師の仕事への評価はどれだけ良い治療をしてゲストを満足させたかではありません。
どれだけ売り上げたかのみです。
ここはビジネスの世界です。
お金を稼ぐ事に後ろめたさを感じているときっとストレスが溜まり、
最後には身体を悪くするでしょう。
それほどまでに豪華客船での仕事はお金に厳しく、ストレスフルな職場です。
しかし、視点を変えれば、
お金を稼げば稼ぐほど、ゲストへ治療をしたという事。
あなたの治療が優れていなければゲストは何度も治療を受けようとは思いません。
つまり、売り上げが良かったという事はそれだけ多くの人を幸せにする事が出来たということの裏返し。
患者の為を思い、時には心を鬼にして治療を勧めることも必要です。
なぜなら多くのゲストは自分の身体がどれだけ悪い状況なのかを理解しておらず、
今後どういう結果に辿り着くのかを考えたことすらありません。
それを変える事が出来るのが鍼灸師という職業です。
お金を稼ぐ事を恐れないでください。
売り上げが良いという事はそれだけあなたの治療が認められたという事です。
ただ、お金を稼ぐ事だけに走らない様気を付けてください。
“医は仁術なり”という言葉を常に忘れずに。

 

9. 郷に入っては郷に従え

それぞれの国地域町にそれぞれのルールがある様にそれぞれの船、スパにもそれぞれのルールがあります。
スパはマネージャー次第で大きく環境が変わリます。
マネージャーが白だと言えば黒も白に変わります。その逆もまたしかり。
いちいち自分の考えを前面に押し出して行動していれば必ず他の人の意見と対立します。
それが外国人とならなおのこと。
まずはその場の流れ、ルールに身を任せた上で自分の考えに従って行動するのが良いですよ。
そして、奥手な日本人は初めはびっくりするかもしれませんが、
船にはヨーロッパ系の人が多いので、
仲良くなった人との挨拶はハグに頬へのキスが当たり前。
片方の頬へのキスなのか両方の頬へのキスなのかは国によって違ったりします。
これらは基本異性への挨拶で、
男性同士では握手とハグのセットが多いですが、
仲の良いゲイの友達とは頬へのキスまでする事が多いです。
その辺の見極めも周りの行動を見て慣れていってください。

 

10. 仕事がうまくいかない時ほど休みを充実させろ

日本人は真面目な人が多いです。
他の日本人に比べたらそうでもないという人でも外国人に比べたら圧倒的に真面目です。
そんな人が陥りやすいのが、
船に乗ってなかなか仕事が上手くいかず自分を責め、
無駄に労働時間を増やし、
オフの時間は部屋に引きこもり、
1人でマイナス思考をぐるぐると巡らせ、
しまいにはストレスで体調を崩すというパターンです。
そんなあなたへアドバイス。
とりあえず遊べと。
仕事が暇なら海でも眺めてボーっとしたらいい。
壮大な海とどこまでも広がる空を見上げたら小さな悩みなんて吹っ飛びます。
どんなものでも流れがあります。
流れが悪い時にいくら頑張っても一定以上良くはなりません。
それなら暇な時はパーっと遊んでリフレッシュしたら良いんです。
気持ちが上向くと仕事の流れも上向きます。
せっかく豪華客船という他にはない環境で、
毎日の様に違う国や港に行ける機会は今後そうそう無いと思います。
そんなまたとないチャンスに1人で閉じこもったてしょうがないですよ。
もちろん必要最低限の努力はするべきですが、
やる事やってダメなら気持ちを切り替えてパーっと遊ぶのが良いです。
特に初回の契約の方はそのことを肝に命じておくと船の生活がよりいっそう楽しめますよ。

 

11. 自分が働きやすい環境を整えろ

自分1人で出来る事には限りがあります。
すべてを自分1人でやっていては船ではなかなか厳しいものがあります。
重要なのはどれだけ周りの助けを得る事が出来るか。
自分が何もしなくても勝手に予約が入ってくる環境を整える事が出来れば自分はゲストの治療に集中するだけで良くなります。
そんな環境を作る為にはどうしたら良いのか考えましょう。
絶対条件はマネージャーと良好な関係を作り信頼を得る事。
飲ミニケーションはコミュニケーション。
同僚とお酒を飲む時間を作るのも関係を良好にする1つの手。
クルーズディレクターや他のデパートメントのトップと仲良くなって良いイメージを持ってもらえればSPA以外の場所で鍼灸をプッシュしてもらえます。
意外と盲点なのがメディカルセンター。
船にはメディカルドクターが乗ってます。もしもの時の急患の為です。
ごく稀に船の上で亡くなる方もいますし。
そんなメディカルドクターと良好な関係が作れれば彼らからゲストが回ってくる事もあります。
自分1人でプロモーションをするよりも周りが率先して鍼灸をプッシュしてくれる環境を整える事が出来たら仕事がかなり楽になりますよ。
マネジメントとはそういうことです。
豪華客船とはマネジメントを学び試すのに最適な場所と言えます。
これを理解して実践する事が出来ればもうどこでも仕事をしていく事が出来る様になるでしょう。

 

 

以上、船で必要な心構えを書いてみました。

豪華客船での職を得るのは難しくはないですが、
簡単でもないです。
せっかく頑張って船に乗ったは良いが、
なかなか上手くいかず悪い思い出しか残らず船を去って行く方もいます。

そんな人が1人でも少なく慣れば良いなと思い、
自分の経験から心構えをまとめてみましたが、
みなそれぞれ違う性格を持っている様に
必要な心構えも変わってくるでしょう。

上記にあげた事が全ての人に合っている訳ではないと思いますが、
これらを頭の片隅に置いておけばきっと船の生活を楽しめるようになると思います。
もちろん実行する事が前提ですよ。

もし、あなたが豪華客船での生活を一生の思い出に残る楽しいものにしたいのであれば、
是非上記の心構えを実践してみてください。

豪華客船生活4年目で、
誰よりもこの生活を楽しんでいるものより。

MITS

 


スポンサーリンク

blog about

ブログでは鍼灸・医療・身体の事を中心にMITSが実際に経験したことから学んだことを書いています。

時には旅の話や日頃考えていることなど医療と全く関係ないことも書いています。

 

ブログを通して生き方、考え方などを伝えています。MITSの見て感じている世界を少しでも共有出来たらなぁと、このブログを通して人々が幸せに生きる力になれたらなぁと思って書いています。




note / Mits F Matsunaga(ミッツ・F・マツナガ)

↓↓↓

Recommend
Category
youtube youtube