Date - 2018.04.18
Category -
経絡とは一体なんなのか、横隔膜はどこからどう付着していて外部からアプローチは可能なのか、大腿5頭筋!????
2018年1月の記録より
ハワイでの3日間の解剖実習が終わりました。
気持ち的にはあと2週間くらいやってたかったなぁと思ってますが、
とてもたくさんのことを学ぶ事が出来て個人的には大満足の結果となりました。
解剖実習は今までアシスタントとして何度かやらさせて頂き、
のべ20体以上の献体を見て触らせて頂いていましたが、
今回は自分でメスを持って皮膚がある状態から解剖させて頂き、
解剖されきっている献体では見れないところがたくさん見れてとても勉強になりました。
何より、防腐処理をしていない献体も見させて頂き、
生きている人間と同じように関節が動き、
生きている人間と同じ肌の柔らかさを持ち、
生きている人間と同じ筋肉の硬さを持った献体から学べる事は、
ホルマリン漬けの献体を何百回見る事以上の学びを得る事が出来ました。
学んだ事全ては書ききれないので
自分が3日間1日毎のメインテーマとして見ていた事について分かった事をシェアしようと思います。
東洋医学、鍼灸治療でいう経絡とは一体なんなのか。
おそらく、鍼灸師も含めほとんどの人が経絡が血管のように実際のものとして物理的に身体にあると思っていないのではないでしょうか。
僕はあるんじゃないかと予測してまして、
初日はみんながせっせと皮膚や脂肪、結合組織を剥がして筋肉を出している間ずっと皮膚から筋肉の間までを観察していました。
透明な管が、動脈でも静脈でもない第3の脈管系があるのではないかと。
まず、結果から言います。
透明な管、見つかりました。
ええっ!??
マジか!?
と驚く方がいらっしゃるかと思います。
僕も見つけた時はかなり興奮してました。
(表情や行動には出してませんでしたが)
解剖実習の時にはリンパ菅は見つける事が出来ないと言われています。
人間が死ぬとリンパ菅は無くなってしまう。
もとい見えなくなってしまうと。
僕は半透明、限りなく透明に近い管を上背部の脂肪組織と線筋膜の間、前腕の皮膚の裏側、大胸筋と肋間筋の間の脂肪組織の中で見つけました。
それらはおそらくリンパ菅だと思われます。
リンパ菅は大きいものは静脈と並走すると言われています。前腕の静脈の横に張り付き並走している透明な管を見つけれましたのでそれはまず間違いなくリンパ菅だと思われます。
面白いことに前腕部では経絡の走行似たような形で静脈が流れています。
そして、静脈が流れていない経絡の流れの場所には透明なリンパ菅が流れている事を確認する事が今回出来ました。
リンパ菅は太い部分では確かに管の形になりますが、皮膚の表面近くや脂肪細胞の間では管の形を為さず、隣り合う脂肪細胞や結合組織と脂肪細胞の間に小さな隙間を作り管がなくても組織液の流れを生み出しています。
イメージはアリの巣で考えて頂くと良いかと。
地面の中にある大きな砂の粒が脂肪細胞、小さな砂の粒が結合組織、大きな砂の粒と小さな砂の粒の間にはスペースがあり、そこには水が流れる。
やがてその流れは集まり大きな道を作って行く。アリの巣で言うアリの通り道のように。
この脂肪組織と結合組織の間のスペースはとても小さいです。脂肪の塊を切り取り、薄く伸ばして蛍光灯の光にすかして結合組織がちぎれないギリギリの張力をかけてやっと確認する事が出来ました。
僕が考えていた経絡とは筋・筋膜と皮膚の間にある結合組織と脂肪組織の間にある隙間であり、血管の脇にあるスペースであり、
そこにある血管のような管、もしくは管のような構造の事である。
管状にはなっていないかもしれませんが、
この仮説が正しければ、なぜ経絡は筋肉や血管の走行に沿うのに近い形で走っているのかの説明がつきますし、
東洋医学の経絡治療が、なぜ筋膜のつながりを元に考えられたアナトミートレインと似た考えになるのかの説明も出来ます。
アナトミートレインが筋膜ベースで考えているのに対し、経絡はそのさらに上層であり皮膚の下の結合組織と脂肪組織の中にあると言うことが出来ます。
経筋は筋膜、経絡は脂肪組織と結合組織の間のスペースと言うとわかりやすいかもしれません。2018年3月27日に発表された論文で“間質”という概念が提示されました。これがこのスペースの事であると僕は考えています。
“間質”についての記事
これについては今後の研究が必要となり、今回の解剖実習だけで経絡があったと断定する事は出来ませんが、
自分の仮説が正しいかもしれないと言う光明を見出す事が出来ました。
まだまだ理論に矛盾もありますので今回の結果を客観視して内容をまとめていこうと思います。
2日目のテーマは横隔膜
治療をしていく上で僕が1番重要視しているのが呼吸です。その呼吸に1番関係しているのが横隔膜です。
今までの解剖実習で確認した横隔膜はどれも防腐処理の影響で硬くなっていましたが、
防腐処理をされていない献体では身体を左右に揺すればプルプルと動くほど柔らかかったです。横隔膜の形はドーム状です。しかし実際に見ると左右対称のドーム状ではありませんでした。
肝臓がある影響で右の横隔膜の方が頂点が高く、
右側の方が中心からの幅が広かったです。
つまり体の右側の方が横隔膜のスペースが広いのです。
なので呼吸をして左右の頂点の位置が揃うようにドームの形が動くと、どうしても身体が傾いてしまうのではないかと予測を立てる事が出来ます。
ティーンエイジャーに特発する側弯はほとんどが右側弯です。
なぜでしょうか。
身体の構造的に、横隔膜の形によって右側弯が起こりやすいと上記の事実から考えることはそう難しくないのではないでしょうか。
今回たくさんの日本人治療家の方にお会いして知ったのですが、日本では横隔膜マッサージ?横隔膜ストレッチ?なるものが流行っているとか。
僕が確認したところ、横隔膜の下部での付着部は第11肋骨の後面から第12肋骨の後面にかけては完全に骨にくっついており、遊びが一切ありませんでした。
つまりたとえ指を引っ掛けて第12肋骨下端に指を滑り込ませられたとしても横隔膜に直接アプローチする事は出来ないでしょう。
だってそこの緊張は横隔膜の緊張には作用しないんですもの。
1つだけ横隔膜の緊張を変える事が出来る事がありました。
それは肋骨下端を掴み肋骨を胸郭を広げるように動かす事です。
そうすると横隔膜の緊張具合がほんの少し変わりました。
横隔膜の緊張具合に1番影響を与えるのはおそらく呼吸です。
呼吸が横隔膜の伸び縮みを1番大きく変えます。
もし呼吸をする際に胸郭が開いてしまい肋骨が動かなければ、横隔膜の収縮が最大限に起こらず呼吸を深く出来ない可能性があると
解剖実習で直接見て確認した結果から言う事は出来ます。
なので、もし横隔膜マッサージ、横隔膜ストレッチと言って施術して効果が出ている方は、
それは直接横隔膜に手技で影響を与えたから変化が出たのではなく、
肋骨に付着している腹筋群が緩んで胸郭の動きが良くなったことにより二次的に呼吸が変わり、胸郭に着く筋群が緩み身体に変化が出たのではないかと言えます。
なので、横隔膜マッサージ、横隔膜ストレッチという名称は解剖学的に言えば間違いで、横隔膜に直接アプローチする事は出来ないと言い切る事が出来ます。
これは実際に防腐処理をしていない献体を見た人からすれば動かしようのない事実かと思います。
なので、もし、横隔膜へアプローチする方がいれば、手技と同時に呼吸指導をする事で効果を最大限に高める事が出来ると思います。
むしろ呼吸を変えなければいくら手技をやったところで大した効果は出ないと言うことも出来ます。
3日目、大腿部の新しい筋肉
最後に。
3日目1番の衝撃と達成感を得る事が出来たのが、大腿四頭筋にある第五の筋を見つけれた事です。
つまり、大腿四頭筋は本当は大腿五頭筋だったと言う事です。
筋肉の名前は、Tensor of Vastus Intermedius(中間広張筋?)
僕はこの第五の大腿の筋肉があるという情報を
いつもたくさんの刺激を頂いているテキサスA&M大学のATC講師をなさっているAbe Sayuriさんのブログで知りました。
記事はこちら。
「大腿に新しい筋肉が見つかった?Tensor of Vastus Intermedialis。」
僕は実際自分の目で見たものか、経験したことしか信じないので、この中間広張筋も疑い半分で探していました。
Ken先生の御協力のもと大腿部の筋を探ったところ、防腐処理をしていない献体でこの中間広張筋を確認する事が出来ました。
しっかりと中間広筋と独立しており、
間違いなく別の筋肉だと言えるものでした。
起始部はSayuriさんのブログにあった通り、小臀筋の停止部(半分重なり半分はもう少し前の骨に付着)に付いており、連動性があるのではないかと考えられそうです。
筋腹は思ってた以上に長く、大体の中央部まで、大腿骨の半分の長さまであり、その部分で中間広筋と合わさり腱へと移行していました。筋腹の幅は約3cm(この献体の方の大腿部の幅は約15cm)でした。
中間広張筋は体表から見ると外側広筋の下で中間広筋の上を並走するように走行し、起始部は中間広筋より少しだけ上から始まっていました。
文書でイメージが湧きにくい方は是非画像で確認して見てください。
インナーマッスルは総じて筋出力を上げるより、センサーの役割を果たして動きの安定性や姿勢保持に働く事から、この中間広張筋も膝蓋骨の安定性や股関節の安定性(小臀筋との連動により)に関係してくるのではないかと考えられます。
もし、治療でこの中間広張筋を活かすのであれば、膝蓋骨の安定性が悪い患者さんにはASISの下方から少し外側の部分で中臀筋の付着部である大転子を外方ではなく前方からアプローチして筋緊張を緩める事、
もしくは刺激を入れる事で膝蓋骨の安定性を向上させる事が出来るのではないか、
また中間広筋、中間広張筋にアプローチする事で小臀筋、つまり股関節へのアプローチをする事が出来るのではないかと思います。
まだまだ頭の整理が追いつかないですが、
今回学んだ事を今後の治療に活かして行ければと思います。
Ken Yamamoto先生をはじめハワイ大学の教授と講師の方々、
一緒に解剖実習で人体の神秘を学んだ日本中世界中の治療家の方々からたくさんの刺激を受ける事が出来ました。
本当にハワイに来て、この解剖実習に参加して良かったなと思います。
Ken Yamamoto先生のホームページはこちら↓
http://www.ken-yamamoto.com
僕はこれからしばし旅人生活に戻ります。
今日はカリフォルニアから飛んで来たいとことウォルマートの駐車場で車中泊と解剖実習からうってかわって放浪人の生活らしくなって来ましたが、勉強の手は止めずこれからも学び続けて行こうと思います。
船上鍼灸師で写真家でもあり旅人のMITSでした~
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