Date - 2019.03.11
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続・ツボって〇〇。鍼灸治療がなぜ内科疾患に効くのか考察してみた。
前回書いた記事で、ツボってファシアが絡まった場所/逆にファシアが緩んでいる場所だと説明しました。
自分で書いておいて言うのもなんですが、
これって、物事の1つの面しか見ていないわけで、
必ず正しいってわけじゃないんです。
つまり、
ツボ=ファシアが絡まった場所/逆にファシアが緩んでいる場所
ではなく、
ツボ≒ファシアが絡まった場所/逆にファシアが緩んでいる場所
と、考えて欲しいわけです。
特に、WHOで定められている361個の経穴においては、それが強く言えます。
だって、経穴以外の場所にだってファシアの絡まりは起こり得ますもん。
なので、実際にツボがなんなのかを紐解くには、
さまざまな面、さまざまな角度から見て行かなければなりません。
ということで今回の記事では、
なぜ、鍼灸治療は内科疾患に効くのかという視点で、
ツボとは一体なんなのかについて考察して行きます。
この記事に書いてあることは、
あくまで個人の考察であって、
学会発表するものでもなければ、
確実な裏付けがあるわけでもないので、
こんな考え方もあるんだ程度に受け取ってもらえたら良いかと思います。
ただ、書いている内容は僕の頭の中で作り出したことではなく、
しっかりと文献を用いて仮説立てをしてますので、
トンデモ理論ではないですし、
あながち間違ってないんじゃないかと思います。
答え合わせは今後の研究を楽しみにして待つということで。
では、前置きはこの辺にして、
本題に移って行きましょう。
Contents
ツボへの刺激がなぜ、身体の内部まで伝わるのか
答え:ツボを刺激することで発生した電気が身体内部へと伝わっているから。
鍼灸治療が内科疾患へ効くという事実から考えると、
ツボへの刺激は間違いなく、身体内部へと伝わっていることになります。
では一体、何がどうやって伝わっているのでしょうか?
一つ目の仮説は、
神経刺激です。
おそらく、これはまず間違いなくあります。
ツボに鍼の物理的な刺激を与えたり、
灸で温熱刺激を加えることで、
自由神経終末(神経細胞体から伸びた軸索の末梢部位)であったり、ゴルジ腱器官(骨格筋と腱の移行部にあるコラーゲン線維の皮膜に覆われた構造を持つ長さ500-1200μm、直径100-120μm)、筋紡錘(筋肉内部にある筋肉の長さを検知する固有受容器)を刺激し、
そのシグナルが神経を介して脊髄や脳へ送られ、その反射として、各筋肉や皮膚、内臓へと刺激が伝播することが考えられます。
これに関しては探せば論文が簡単に出てくると思います。
また、別の説明をするならば、
ファシアは物理的刺激を加えられて形が変わると電気を発生させることが研究により分かっています。
つまりですね、
電気が発生すれば、神経などを介して刺激が伝播するということが言えます。
この電気刺激がおそらく、鍼灸治療や指圧治療特有の響きだと思います。
これらなら銀の棒(鍉鍼)をツボに押し当てるだけでなぜ効果が出せるのかの説明になるかと思います。
そして、面白いことに、ツボと呼ばれる部位には、その他の部位より、自由神経終末が多くあるとも言われています。
(これについてはまだ文献を読んだことがないのでまだ又聞き状態ですが、
たぶんあると思うんで今後調べてアップデートします。)
なので、前回の説明に付け加えると、
ツボとは、ファシアが絡んでいる場所/緩んでいる場所であり、自由神経終末が集まっている場所だと言うことが出来ます。
電気信号はどうやって身体内部へと伝わるのか
答え:神経、ファシアを介して体内へと伝わる。そして第3の道があるかも。
どうやら電気信号が刺激を伝播させているらしいということが上記の説明で分かったと思います。
次に考える必要があるのは、
その刺激は一体何を介して伝わっているのかと言うことです。
今まで分かってる解剖学的に言えば、
神経1択になってしまうわけですが、
それだと東洋医学思想の経絡の説明がつかないんですよね。
だって、神経の走行と経絡の走行ってまったく一緒じゃないんで。
神経のみが答えだったら簡単な話だったんですけど、
人間の身体はもっと複雑なんです。
気の流れが経絡を通って内臓までいくと言うのが、
東洋医学の考え方。
この単語を別の言葉に置き換えてみましょう。
そうすればもっとわかりやすくなるはず。
気の流れが経絡を通って内臓へと伝わる
↓
電気(電子)がファシアを通って内臓へと伝わる。
ちょっと、科学っぽい言葉になりましたね。
そうなんです。
実は、ファシアって、形が変わると電気を生み出すことと同時に、
電気をファシアを介して伝達させることが分かってます。
ファシア内は組織液(細胞液)が流れているので、
その液体を介して電気が流れるわけなんです。
水は電気を通すことを考えれば、
組織液に電気が流れることは納得出来るかと思います。
つまりですね、
ファシアの繋がりが体表から体内へ、
そして各臓器まであるというわけです。
図にするとこんな感じ。
↓
これは肺経ですね。図は、The Uncharted Bodyより参照。
昨年、鍼灸業界で話題になった閃く経絡という本が、
経絡≒ファシア説を上手く説明しているので、
興味がある人はそちらを読んでください。
閃めく経絡(ひらめくけいらく)―現代医学のミステリーに鍼灸の“サイエンス"が挑む!
鍼灸治療が起こしているのは、電気刺激であり、
そのシグナルは神経を介して脳・脊髄へ、その反射として効果を出している場合と
ファシアを介して内臓へ刺激が直接伝わって効果を出している場合があると考えられます。
また、ファシア内の組織液の還流量が変わったり、
流れ方が変わることも内科疾患に効果が出せている理由なのかなと思います。
鍼灸治療の刺激を伝える第3の道の可能性
この段落で説明することはまだ確実にあるとは言えないことなので、
仮説のひとつだと捉えてもらうと良いです。
まあ、研究報告では人体内部ですでに見つかったと言われてますし、
僕もハワイ大で行った解剖実習の際にそれらしいものを見つけて、
自分の目で見てしまったのでたぶん正しいんだろうなと思ってますが。
第3の道の仮説は、今からさかのぼること約半世紀、
1960年代に北朝鮮のキム・ボンハン博士によって唱えられたボンハン学説をもとにして唱えられているPrimo Vascular System(原始脈管系)というものです。
文字通り、原始の脈管系が体内にあり、
その原始脈管系は、
動静脈の脈管系、神経系、免疫、ホルモンなどのシステム全てに関係しており、
人間が受精卵から人へと分化する過程の初期に現れたもので、
血管や神経が出来る前から存在し、
人間を形作る上でなくてはならなかったものとも言えます。
それが人となった後にも人体に残っており、人体の外と中を繋ぐ役割を持っているということです。
図はこちら。
↓
このPVS自体は透明な管なのでよっぽど注意して見なければわかりません。
昔の科学技術では見つけることが出来ませんでした。
また、透明の管の中に流れているのが透明な組織液だったことも見つけるのを難しくしていた要因だと思われます。
1960年代にキム・ボンハン博士がこの説を提唱した時にも後追い研究がされましたが、
詳しい方法の記載がなかった為、
実証するのが難しく当時の医師たちはボンハン管を見つけることが出来ず、
この学説は間違いであると結論付けましたが、
2010年になって、韓国のソウル国立大学物理学部生物医学物理学教室のソ・グァンソ教授の研究チームによって再びボンハン学説の研究がなされ、ボンハン管のようなものが見つけ出され、ソ教授たちによって、PVSと名付けられました。
PVS自体が経絡であるという確証はまだ出ていません。
(僕個人としては、経脈というより、絡脈に近いのかなって考えてます。)
現状分かっていることは、
PVSが脂肪組織に優先的に存在したり癌組織と別の癌組織がPVSで連結されたりしていることなどから、癌、肥満、組織の再生などにPVSが重要な役割を持っているのではないかとソ教授らによって予測されているということです。
ただ、鍼灸刺激がこのPVSを介して人体内部の臓器へと刺激を伝播させている可能性は十分に考えられるのかなと思います。
PVSについては、また別の記事でより詳しくまとめたいと思います。
気とは何か、科学的な視点から内科症状に聞く理由を考える
ツボへの刺激で内科症状に効果が出ているのはなぜかを考える場合、
そもそも氣とは何かを考える必要があるかと思います。
氣の実態をつかまなければ、
なぜ内科症状にも効くのかを説明しきることは難しいのではないかと思います。
氣がなんなのかについてはとてもうまく説明出来ている本があるので、
そこから引用させて頂きます。
その本は日本ではまだ発売されてないんですけど、
閃く経絡を書いたダニエル・キーオン博士の新著「The Uncharted Body」という本です。
興味がある人は是非英語版(原本)を買って読んでください。
こちらの本についても近いうちに記事でまとめたいと考えてます。
(今、英語の本を読んでいるところなのでしばしお待ちを)
その本の内容を超簡単にいうと、
氣とは、電子と捉えることが出来て、
電子の受け渡しによって発生する電気によってパワーが作られることから、
氣の受け渡しでエネルギーが作られるということも言えます。
つまり、氣って動き続けてないとなんのパワーも起きないんですよね。
死んだ人の氣(電子)は動かない。
そうなればパワー(エネルギー)も作られないし、
電気シグナルとして読み取ることも出来なくなるということ。
心臓が止まると心電図の波形が止まるのは、
置き換えて見れば、心筋の動きが止まった≒電子(氣)が動かなくなったために電気が生み出されなくなったと言えるのかもしれません。
人体内部の電子(氣)の図
↓
The Uncharted Bodyより
この電子(氣)は、人体内部のさまざまなタンパク質やホルモン、その他伝達物質という形で人体の中にあります。
図では、分かりやすく電子として表してありますが、
電子単独で存在しているわけではないと考えてください。
この電子が流れているのが、
経絡≒ファシアであって、
ファシアは、末端に行けば行くほど道が狭く、
体内に行けば行くほど広くなっています。
イメージ図がこちら↓
The Uncharted Bodyより
末端に行けば行くほど、電子の密度が濃くなります。
鍼灸治療でなぜ末端のツボで著効を見せたりするのかを科学的に説明するなら、
末端に電子が集まりやすい分、変化をさせやすいのでしょう。
刺絡なんかで物理的に血を抜けば、その分血液と一緒に電子を減らすことが出来て、絡まった電子が動きやすくなると考えることが出来るでしょう。
東洋医学で言う、
各臓器が持ってる氣の量というのは、
言い換えてみれば、各臓器が持ってる電子の量と言えるでしょう。
つまり、気虚とは電子の数が少ない状態で、
気実とは、電子の量が多すぎる状態。
電子が少なければその分、
電子の動きの総量が小さくなるので、
電子の動きによって発生する電気(エネルギー)の量も小さくなります。
なので、臓器内の電子の量が少なければ、その分その臓器で生み出されるエネルギーの量は小さくなるでしょう。
内科疾患は、内臓の働きの不調で起こるもの。
言い換えれば、内臓が正しく動いていない状態。
もっと言えば、内臓内の電子の動きに不調があるもの。
じゃあ、
内臓内の電子の動きを整えてあげれば、
症状が良くなるんじゃない?
どうやってそれをするの?
ツボに鍼灸刺激を与えることで、
ファシアを介して電子の量や流れを改善出来るよね。
だから鍼灸治療で内科疾患にも効果が出せるんだよって説明になります。
今までのツボについての説明を直すと、
ツボとは、ファシアが絡んでいる場所/緩んでいる場所であり、自由神経終末が集まっている場所
↓
ツボとは、ファシアが絡んでいる場所/緩んでいる場所であり、自由神経終末が集まっている場所で、電子の量が多い/少ない場所。
となります。
ツボの説明をする上で大切なことは、
多面的に見て説明をすること。
これでもまだまだツボについての説明は足りないでしょう。
ツボと脳の関係も書き記すべきだと思いますし、
また違った角度からツボを見る必要もあるでしょうし。
どのツボに刺激を与えれば、
内臓内の電子の量を増やせるのか、もしくは減らせるのかの説明は、
The Uncharted Bodyという本に書いてありますので、詳しく知りたい方は本を読んでください。
それか、そのうちブログでもまとめますのでそれまでしばしお待ちください。
ツボへの刺激が及ぼす脳の変化
最後に、鍼灸刺激が及ぼす脳の変化について少し触れておきたいと思います。
人体内部の内臓へ刺激を与える場合、
方法は大きく分けて2つ。
一つが、これまで説明してきたような内臓へ直接刺激を伝達させる方法。
もう一つが、脳を刺激することで、二次的に内臓へと刺激を与える方法。
これについては、
どうやら日本の北斗病院で医師と鍼灸師さんが手を組んで研究をやっているようで、
世界が驚くような研究結果が出てるようですのでその発表に期待しているのですが、
今回の記事でも少し触れておこうと思います。
こちらの図を見てください。
こちらはfMRIの画像です。
なにを表しているのかと言うと、
ツボへの鍼刺激とツボじゃない部位への鍼刺激で脳にどのような差があるのかということです。
(VisualはLightによる刺激だそうです)
見てもらえれば一目瞭然ですが、
ツボへ刺激した場合は脳の特定の部位に反応が出ています。
つまり、どのツボが脳のどこへ刺激を与えるのかを特定出来れば、
脳のどの部位が身体のどの部位に関係しているのかから逆算して、
どの取穴がどんな症状により効果的なのかを科学的に証明することが可能なんじゃないかと思います。
この研究はあくまでツボへの刺激が脳のどの部位に反応を示すのかしか示せていませんが、
どのツボが脳にどんな作用をもたらしているのか機能的なことを調べることが出来れば、
鍼灸がツボに刺激を与えることで起こる効果を証明出来るようになるんじゃないかと思います。
まだ情報がほとんど入って来てないので、
あくまで予想ですが、
北斗病院の医師と鍼灸師さんの研究はこのあたりを調べてるんじゃないかなと思っています。
いやー、今からどんな結果が出ているのワクワクが止まりませんね!
おわりに
今後10年で鍼灸についての研究がより進んで、
さらに大きな発展を見せることでしょう。
そのきっかけがどの国からもらたされるのかは分かりませんが、
時代が大きく変わろうとしているのは確かです。
鍼灸業界にも大きな変化が訪れるんじゃないかと予測しています。
今後、鍼灸師は、ここに書いてあるような科学的視点で鍼灸や東洋医学について考える必要がもっと増えてくると思います。
そのうち学校のカリキュラムでも生物医学、物理学の授業が組み込まれるようになったりして。
むしろそうなる方が良いんだろうなって思います。
個人的には、量子学、量子力学が鍼灸を解明する最後のキーになるんじゃないかなって思っています。
今回の記事に書いてある内容はその初歩の初歩的な内容。
そんな視点で見ると鍼灸という学びの広がりはとても大きいし、
面白いものと捉えることが出来るんじゃないかなと思います。
僕は、ここに書いたツボについての説明が完璧な理論であるとは思っていません。
あと5年も経てば何が正しくて何が間違ってるのかはっきりとするんじゃないかなと思います。
これからも勉強を続けて、
このブログを通してさまざまな鍼灸理論についての情報をアップしていければと思っています。
今後ともよろしくどうぞ!
MITS
参考
https://www.slideshare.net/mobile/thorntonstreeter/primo-vascularmeridian-system-2016
http://mumsaic.jp/info/index.php?c=topics2_view&pk=1420446523
https://www.hindawi.com/journals/ecam/2013/587827/abs/
参考文献
「閃く経絡」- ダニエル・キーオン
「The Uncharted Body」 – ダニエル・キーオン
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