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Date - 2019.02.01

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豪華客船を辞める日。簡単でとっても難しいこと。

豪華客船という環境は、蟻地獄のようなものなのかもしれない。
一度ハマってしまうとなかなか抜け出せない。

もしくは、麻薬のようなものなのかもしれない。
一度辞めてもなかなか頭から離れず、戻って来てしまう。

1度の契約だけしか働いていない人には、あまり当てはまらない。
2度3度と繰り返すうちにその症状は強くなっていく。
非日常という日常がある世界、それが豪華客船。

 

 

豪華客船の仕事を辞めるということ


仕事を辞める。

社会人生活が長くなれば多くの人が一度は経験することだろう。
豪華客船の仕事を辞めるのも他の仕事を辞めるのも変わらない。
仕事を辞めるという面では。

しかし、生活面で考えると大きな違いがある。
特に独身で家庭を持っていない人にとっては。
豪華客船で働く人が仕事を辞めた場合、今までとは全く違った生活環境で暮らすことになる。

それまでは1年のうち9ヶ月近くを船で生活し、休暇中は親の家で過ごすよりも旅先で過ごす時間が長かったりする。言わば、自分の家が無い生活から、どこかに定住することになるわけだ。

以前の生活に戻ると言えば、その通りなのだが、
豪華客船での生活に慣れてしまうと普通の生活ではどうしても物足りなく感じてしまう。

契約期間の7ヶ月が1年以上の長さに感じるほど濃い時間が流れているのが豪華客船。
豪華客船という限られた空間で四六時中同じ人々と仕事をし、生活している環境は、他に類をみない。

それがすでに日常となってしまった人が新たな生活を送るのにはとても苦労することだろう。

また、豪華客船での仕事は、毎クルーズゼロからのスタート。
つまり、どれだけ積み重ねても決して長期におよぶキャリア形成には結びつかない。(一部の役職は除く)

鍼灸師の立場で言うと、どれだけ治療を気に入ってもらってもリピーターは付かない(付けない)。
豪華客船でどれだけ働いたとしても安定した生活には結び付かない。
豪華客船での仕事を続けることで得られるのは、経験とお金だけだ。
世界中に友人が出来るから、そういった意味ではつながりは出来る。

しかし、それは陸地に定住して得ることが出来る地域の人々とのつながりとは全く違うタイプのつながりであり、やはり、将来に繋がって行くわけではなさそうだ。

豪華客船での仕事を辞めるということは、
非日常の世界から現実へと戻ってくることだと言ってもいいのかもしれない。

 

 

豪華客船の仕事を辞めるのが難しい理由


辞めるだけなら決して難しくない。

契約を更新しなければ良いだけだ。むしろとっても簡単だ。
乗船途中に辞めることだって出来る。
(この際、2度と同じ会社では働けないことを覚悟する必要はある。)

難しいのは心の問題と言って良いだろう。
どう自分の気持ちを切り替えるのか。
そこに尽きる。

 

長く働けば働くほど、仕事を辞めた後に船の生活が恋しくなる。

結婚を決め、大きな環境の変化があるというならまだ踏ん切りが付けやすだろうが、そうではない人は環境の変化に苦しんでいるようだ。

僕は豪華客船で働き始めてから5年が経っている。
僕以上に長く豪華客船で働いていて、豪華客船での仕事を辞めた友人の数はあまり多くない。
ほとんどの友人は今も豪華客船で働いているし、豪華客船での仕事を辞めた友人のほとんどは1−2回ほどしか契約をしていない人ばかり、長くても2−3年働いて辞めたという友人がいるくらいだ。

 

5年以上豪華客船で働いてすんなり地元での生活に戻った人は僕の知る限り1人もいない。

多くは別の国に移住したり、地元とは別の都市に移ったりしている。

そして、豪華客船の生活を思い出してしまい、数ヶ月から数年は悩ましい日々を送っている。

中には、豪華客船に戻って来る人もいる。
知り合いの日本人鍼灸師が去年から今年にかけて3人、豪華客船の生活に戻って来ている。

彼ら彼女らがどんな想いで豪華客船に戻って来たのかはわからないが、
やはり、すんなりと陸地の生活に戻って安定することが出来なかったのだろう。
豪華客船で働く人には自由人が多いから仕方がないのかもしれない。

 

自由人からすると一つの土地に居着くというのはなかなかに難しいことなのだ。
飽きっぽい。そうなると豪華客船の生活がまた魅力的に思ってしまうのは仕方のないこと。

豪華客船以上に自由で濃い日々が送れる環境はそうそう無い。
だから豪華客船での仕事を完全に辞めるのは難しいのだ。

 

 

豪華客船の仕事を辞める決意


僕は、豪華客船の仕事を辞めると決めた。

辞めようかなと思い始めたのは、1年半以上前のこと。
ただ、その時には辞めた後にどこで何をするのかの計画がまったく無かった。
仕事が忙し過ぎて心を亡くしかけていたのと、職場で毎日のように同僚が言い合いをするようなまったくもってリラックスが出来ない環境に嫌気がさしたのがきっかけだ。

ただ、そこで全てを投げ捨てて仕事を辞めるという選択はしなかった。
当時、一緒に働かないか?という話を数件もらっていたし、日本に帰れば、日本を離れる前にお世話になっていた先輩の会社で働かしてもらうことも出来たので、辞めても問題はなかった。
しかし、そこで辞める事は本当の意味で豪華客船の生活で築きあげてきたものを捨てることを意味していたし、おそらく後悔が残っていただろう。

そこで僕は、考えた。
今後の将来をどう生きていきたいのかと。
また、後悔をせず、すべてやり切ったと胸を張って次のステップに進むためには何が必要なのかを。

僕はこれまで6度の契約を結び、7隻の豪華客船、5つのクルーズラインで働いて来た。
その中で唯一心に引っかかっていたのが、1番初めに乗った船、すべての始まり、ディズニークルーズのことだった。

たくさんの辛い思い出とたくさんの楽しい思い出が詰まった船だから、
僕にとってディズニークルーズのディズニーワンダーという船は特別な存在だ。

それにディズニークルーズの雰囲気が1番好きだったというのもあった。
もう一度ディズニークルーズで働きたい。

辛かった思い出を、英語が思うように話せなくてした悔しい思い出を払拭する為にも最後はディズニークルーズに乗りたいと前から思っていたのもあり、
最後にもう1度豪華客船に乗ることを決めた。
それは豪華客船を辞める決意でもあった。
2018年の夏の終わりのことだった。

 

ディズニークルーズへの想いについて書いた記事はこちら↓

僕が最後の豪華客船にディズニークルーズを選んだわけ

 

豪華客船の仕事を辞める日


僕はこの記事を船の上で書いている。

今日は2019年1月31日。
船を降りる日まであと3日。

2月3日に僕は仕事を辞める。
契約を満了して終える。
新たな人生の始まりが待っている。

その日が待ち遠しいような、まだ来て欲しくないような複雑な気持ちが胸の中でうごめいている。正直に言うと、仕事はもうしなくても良いくらい後悔は一切ないし、やり切ったと思えている。

後ろ髪を引く想いは、船の生活の方だ。

 

豪華客船の生活はなんだかんだ言って楽しい。
特に今の船では様々な友達が出来てクルーバーに行くのが楽しい。
ダンサーやシンガーのキャストメンバーとも顔なじみになっているし、
その他のデパートメントにも一緒に馬鹿騒ぎの出来る友人が出来た。
もちろん、スパの友人たちも。

 

今回の契約で僕は、ディズニーからロイヤルカリビアンへと移動となった。
その知らせを聞いた時は本当に嫌だった。
あらゆる手段を取ってそれを阻止しようとしたが、ダメだった。
言わば失意とともにこの船にやって来た。

モチベーションはあがらず、新しい環境にアジャストするのにも苦労した。
唯一の救いは、良い同僚たちに、素晴らしい友人たちに恵まれたこと。

クルーバーでのナイトライフは、過去最高の環境だ。
深夜3時4時まで呑んで踊ってという日が続き、月に1−2回は大きなクルーパーティーがある。クリスマスからニューイヤーシーズンの12月1月は特に。

 

ディズニーでは週5でジムに行き、お酒は飲んでも月に2−3回、月曜断食をしていたのもあり、乗船前にアフリカで70kgを超えた体重が62kgを下回るまで落ちて体調面は万全だったのが、
今の船に乗ってバーに週4で行くようになり、ジムへ行く回数が少なくなり、ご飯が美味しいもんだからと過食気味になったこともあり、体重は66kgまで増えた。

後悔はない。

最後の最後に楽しい日々を過ごすと決め、制限を設けずにお酒を飲んでいる。
時には振り切ることも大切。中途半端だと後悔が残るから。

この生活もあと60時間で終わる。
豪華客船で働く最後の日を迎えて心に残るのはきっと満足感であり、
新たな旅立ちへの喜びだろう。

映画ロードオブザリングの最後のシーンが目に浮かぶ。
フロドが指輪を捨てる旅からホビット庄に戻って来て決断したことは、新たな旅だちだった。

僕にとっての指輪を捨てる旅が、豪華客船という生活。
ホビット庄が地元の街。
新たな旅だちがどこになるのかはまだわからない。

でも、地元でゆっくり腰を落ち着ける事はないだろう。

ああ、新しい旅が始まる。


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このブログでは鍼灸・医療・身体の事を中心にMITSが実際に経験したことから学んだことを書いています。

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